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LEAVE NO HEART~失われた物語

BLEACH30巻264話より…ルキアを第9十刃アーロニーロのもとに導いたギンの真の想いとは…
男にしては細く繊細な,長い指がコントロールパネルに表示された回廊のラインを愛おしげになぞる。そこを走る者が辿る道筋を愛撫するかのように。

「何者か,十刃の宮に辿り着きましたか。」

硬い感情のない声が,背後から響く。驚いたわけではないが一瞬,意外そうな顔で男は振り向いた。そしてそこに立つ第4十刃ウルキオラ・シファーの姿を認め,すぐにいつもの嗤いを浮かべた。

「なんや,珍しいね。君がボクに話し掛けるなんて。君,ボクのこと嫌いなんと違うの?」

飄々とした人を喰った口調で,藍染腹心の部下,副官でもある市丸ギンはウルキオラに話しかけた。

「まさか・・・」

感情のいっさいこもらぬ声でウルキオラは答える。嫌いなどと言う感情をともなった考えは,存在理由に虚無を背負う第4十刃である自分の中には存在しない。しかし,市丸ギンという人物にはいささかの興味がないでもなかった。
自分たち十刃のように藍染の絶対的強さ,神にも近い程のカリスマ性に,それぞれ理由は違えど意義を見出して仕えているわけでもなければ,明確な矜持を持って藍染に心酔しきっている東仙要統括官とも違う。明晰で怜悧な思考を持つウルキオラでさえ,彼が何をもって藍染に仕えているのか推測することさえできなかった。

そして今も,彼は彼の一存で『虚夜城』の管制室でスクリーンに映る侵入者達の動向に見入っている。ばらばらに別れた侵入者達は十刃落ち戦闘員達の巣“トレス・シフラス”にそれぞれ進んで行った。その確認が済んだ今,見張る必要すらないというのに。

「そうなん,それやったら,もうちょい仲良うしてくれへんかなあ。ルピくん死んでもうて淋しいねん,ボク。あの子とはよう話,合うてたのに。」

ギンの軽口には構わず,ウルキオラはコントロールパネルに映る回廊のラインを見つめる。

「――・・・・・これは・・・」

侵入者の一人が辿る“トレス・シフラス”へと続く回廊の一つが閉ざされ,第9十刃アーロニーロ・アルルエリの宮へと導く道筋が光っていた。そしてその回廊を駆けるのは小柄な黒髪の少女――。

(いったい何のために・・・・?)

ウルキオラは訝しげにギンの顔を見た。もちろん虚圏から侵入者達を生かして返す意志などなかった。しかし,尸魂界の戦闘力分断計画の遂行のために,そう簡単に死なれては時間稼ぎにならないというのも,また事実であったはずだ。いきなり十刃との戦闘に導くとは?それも侵入者の中で最も小柄で非力に見える少女を向かわせるとは――。おそらく一時も持たず殺される。その姿形すらとどめぬほど,切り刻まれて喰らいつくされる。第9十刃アーロニーロ・アルルエリの能力ゆえに。

「あァ,良えやろ。」

ウルキオラの思考など我関せずという様子でギンはウルキオラに嗤いかける。

「回廊操作を?」

なぜ?という疑問は口には上らせず,ウルキオラは見たままの質問をギンに尋ねた。

「いややなあ,してへんよ。そない意地の悪いこと――それにボク・・・」

ほの暗い管制室でややうつむき加減のギンの表情は影になってわからない。最も,見えたところで何一つ読み取ることなど出来ないだろうが。

「悲しい話,嫌いやし―――」

ギンはつぶやくように言い,再びスクリーンに見入り始めた。


死神の少女が闘っている間,ギンは一言も口を訊かず,一瞬たりともスクリーンから目を離さなかった。ウルキオラはともにスクリーンを見つめながらギンの様子を窺っていた。さして長い付き合いではないがこの男の表面的な行動パターンは把握していたつもりだった。いつものギンならどんなに凄惨な戦闘を目にしたとしても,必ずからかいや揶揄の種を見つけ,そばにいるものが誰であれ何かしら話しかけるはずだった。自分とあまり親しくないとはいえ,この男にしてはらしくないことだった。

今,ギンは無言でスクリーンを見つめ,横にウルキオラが居ることなど忘れているかのようであった。闘う少女の姿に魅入られたかのように恍惚とした表情を浮かべ,時折あるかなきかの微笑みを浮かべる。

三つ又の槍で少女が腹部を貫かれた瞬間,ギンの顔に動揺がはしり,噛みしめた唇から一筋の血がこぼれた。
そして少女が最後の力を振り絞り,第9十刃アーロニーロ・アルルエリを倒した時に見せた歓喜に満ちた誇らしげな笑み――。

「相討ちですね・・・」

「そぉやね・・・」

「あの死神と以前・・・何か?」

質問が口から出た時,ギンよりもウルキオラが驚いていた。他者の過去や思惑など,自身に関係がなければ興味を持つこともない自分が口にした,らしくない言葉だった。

「別にィ・・・何もあらへんよ。あったとしても,どうにもならんことや。」

その言葉の中にかすかにギンの本音が見えた様な気がした。
ウルキオラが更にらしくない質問をする前にギンがさえぎるように言った。

「君のお気に入りの子ぉ,あの子が死んだって知ったら荒れるで・・・他の十刃にとられる前に,早ぉ行った方がええんとちゃう?」

ギンはスクリーンを見つめたまま,指でウルキオラの視線を促す。その指先にある別スクリーンに橙色の髪の死神の少年の姿が映っていた。

霊圧探知能力の低いこの少年が離れた場所にいる少女の霊圧の変化に気付くかどうかあやしいものだと思ったが,その呑気そうな口ぶりの中に有無を言わさぬものがあった。

ウルキオラは踵を返し,出口まで来ると,ギンに一礼した。

「失礼します。市丸副官。」

「はいなぁ,早ぉ行き。」

ギンはウルキオラの方を見もせず,ひらひらと手を振った。飄々とした口ぶりとは裏腹に
その背中からは威嚇するような凄まじい霊圧が放たれていた。

「わからぬ男だ・・・」

ウルキオラは管制室を出ると,ソニードで黒崎一護のもとへと向かった。
完全にウルキオラの気配が消えると,ギンはゆらりと立ち上がった
スクリーンに映る少女の全身は朱に染まり,腹部を貫いた刃が背から突き出ている。少女を見つめるギンの顔に笑みはなかった。

「これで・・・最後やなぁ・・・・・。」

ギンは小さくひとりごちると,瞬歩を使い瞬く間にその場から消えた。

              



ここは虚夜城の一部であり第9十刃アーロニーロ・アルルエリの宮。先ほどまで激しい死闘が繰り広げられていたとは思えぬほどの静寂があたりを包んでいた。天蓋に空いた大穴の上に不意に長身痩躯の白い影が現れ,音もなく宮の床に降り立った。宮の中は息も凍りつくほどの冷気に満たされていた。

「刀折られとるのに,まだ解放状態なんやね。」

白い息を吐きながらひとりごちたのは,十刃と同じ白色の長衣をまとった銀髪の死神市丸ギンであった。

「綺麗なもんやね。あたり一面銀色に輝いていて・・・ルキアちゃんの力はルキアちゃんそのものや。」

白銀色に輝く宮内を愛でるようにギンは歩みを続ける。頭部を打ち砕かれて転がる元同胞,アーロニーロの死体には一瞥もしない。まっすぐに,全身を切り刻まれ,腹を貫かれ,それでも腹這いでも前へと進もうとする姿で倒れ伏す小さな死神のもとへと。

自らの斬魄刀の能力で全身が凍りついている少女を見つめギンは安堵のため息をつく。

「よかった。袖の白雪が解放状態だったおかげやね。出血が抑えられとる。」

自分と少女の周りに外部からは霊圧を感知できない強力な結界を張ると,少女の黒髪をそっと撫で,ギンは詠唱を唱える。

「波動の一,衝。」

ルキアを拘束していた氷が割れ,衝撃でルキアの体がふわりと浮きあがる。床に落ちるよりも早くギンはルキアの体を抱きとめた。

「こんな小っさい体で無理しよったなあ。昔から頑張りすぎるのがルキアちゃんの悪い癖や・・・」

ギンは致命傷である腹部の傷から慎重に刃を抜き去ると,傷口に手をあて回復鬼道を唱える。温かい光がギンの右手のひらからあふれ,徐々に傷が癒されていく。

ルキアが虚圏に足を踏み入れた時からギンは彼女を第9十刃アーロニーロ・アルルエリのもとへと導こうと決めていた。最も,侵入者5人が一丸となって虚夜城を進んで行ったならば,そうするつもりはなかった。しかし戦士としての矜持の高い彼女が,守られて進んで行くことを良しとしないだろうことは容易に想像できた。予想通り,仲間と別れた彼女を十刃の宮に導くことはたやすかった。

「なぜ,あの死神を第9十刃の宮へ?」ウルキオラが口にしなかった質問はギン自身が自分に問いたかった。自分でもうまく説明ができなかったからだ。

彼女の胸の中に今も最上の位置を占める斯波海燕の像を地に落としたかったのか?
救うためとはいえ,その手にかけた敬愛する男の姿を持つ敵の命を絶つことで,さらなる苦悩を与えたかったのか?
それともかつて死に際に託された海燕の心は,真実彼女のもとにあると信じさせたかったのだろうか?

そのどれでもあるような気がするし,どれでもないような気がする。ただ戦う彼女の姿は美しかった。全身血まみれになりながら,それでも強い瞳で敵と対峙するその姿は聖女のように気高く崇高に見えた。肉体は瀕死であっても目だけは決して生を捨てることなく輝き続けていた。

ルキアが腹部をアーロニーロの凶刃に貫かれた時,全身の血が沸騰した。次の瞬間の逆転劇に歓喜と誇らしさで魂が震えた。噛み切っていた唇から流れる血さえも美酒のように甘く感じた。

(やっぱり,ボクのルキアちゃんや・・・)

ギンは多量の出血で冷たくなった体に己の熱を分け与えるかのようにルキアを優しく抱きしめた。苦痛のためにしかめられていた眉間が緩み,ルキアの顔に穏やかな表情が浮かぶ。腹部の傷が癒えるとギンは全身至るところにつけられた傷の治療にかかる。ひとつひとつ,思いを込めて雪白の肌にしみ一つ残らぬように。

最後にアーロニーロに最初につけられた右ほおの深い傷の治療にかかった。一筋の痕も残らぬようとりわけ丁寧におこなっていく。久しぶりに見る愛らしい顔になぜか泣きそうな気持になった。

「ほんまに可愛いらしいなぁ・・・ルキアちゃんは・・・」

自分にこんな穏やかな顔を見せてくれたことなど一度もなかった。ギンはルキアの怒った顔と困った顔しか知らない。たまに自分以外の者に見せる笑顔に嫉妬して,いっそうルキアに意地悪をした自分を思い,苦笑いが浮かぶ。まるで好きな女の子をいじめる年端もいかぬ少年のようではないか。

(仕様がないやん。ボクはガキなんやから・・・)

治療がすべて終わるころ,腕の中のルキアがかすかに身じろぎをした。長いまつげが震え,ゆっくりと濃藍色の瞳が開かれる。まだ意識が朦朧としているのか視線がゆらゆらとさまよう。ようやく瞳の焦点が合うと目の前にいる意外過ぎる人物にルキアは驚愕した。

「な,な・・・!?いっ,市丸ギン!!なぜ貴様がここに?」

「あらら,起きてしもたん。」

ギンの声はのんびりとしたものだったが,しっかりとルキアを抱きしめる腕は力をいささかも緩めない。ルキアはなんとかギンの腕をはねのけようとするが衰弱しきった体は思うように動かせなかった。

「傷は全部治してあるけど,体力までは戻ってへんよ。おとなしゅうしとき,ルキアちゃん。」

ルキアは,はっとして自分の体を見まわした。腹部の致命傷,全身至るところに負っていた刀傷はきれいに消えていた。こびりついていた血さえきれいにぬぐわれ,代わりにギンの白い長衣のあちこちにルキアの血が付着していた。

「何のつもりだ?」

表情を強張らせ,ルキアはギンを問い詰める。

「何のつもりて,傷を治したった相手に対してずいぶんな言い方やね。相変わらず口悪いんやねぇ,きみは。」

言葉とは裏腹にギンは楽しげに答えた。

「ふざけるな!私の手当てをして貴様に何の得がある?私を人質にでもして仲間の隙を突く気か?それとも捕虜にして尸魂界と交渉でもするつもりか?」

「今さら人質も捕虜もボクらの方には必要ないし。殺してまった方が手っ取り早いやん。」

「じゃあ一体なぜ私を?」

ルキアには全くギンの行動のわけがわからなかった。そんなルキアの戸惑い顔をギンは楽しげに見つめて言った。

「その選択肢の中にどうしてもう一つ,はいらんの?」

「もう一つ?」

「ボクがきみのこと好きやからっていうの。」

「・・・・・・・・・・・・はあ!?」

何とも間抜けた声だと自分でも思った。あまりにも意外過ぎるギンの言葉に頭がついていかない。ルキアは眼も口もまん丸に開けてギンを見つめる。

「・・・・・・・・・・・・」

「なんやの,ボクの一世一代の愛の告白に,何か言うことないの?」

「いや,この後『嘘』と言うのだと思って間を置いたのだ。」

ギンの唇から苦笑がもれる。無理もないがルキアは懺罪宮のつり橋でのことを相当根に持っているらしい。

「この状況下で嘘ついたって,ボクにメリットないやん。」

「貴様が楽しいというメリットがあるだろう。」

「かなわんなあ,ルキアちゃんには。」

ギンは今度は心から笑った。戦時の中でルキアとこの様な軽口が訊けるとは思いもしなかった。甘い会話なら更によかったのだが・・・

(まあ,しゃあないわな,これがボクらや。)

ギンはルキアの手を引いて立たせ,まっすぐに顔を見つめた。大きな手がルキアの黒髪をくしゃりと撫でる。

「そんなら,ボクもう行くわ。」

まるで何事もなかったようにギンはルキアに背を向ける。

「ま,待て,市丸!」

「なんやの。愛の告白以外やったらきかへんよ。」

ギンの軽口は無視し,その背中にルキアは詰め寄った。

「なぜ私と戦わぬ?」

「なんできみと戦わなあかんの?」

ギンは振り向かず答えた。

「私とおまえは敵同士ではないか!」

「ボクの敵はきみやないよ。きみが戦いたいんやったら,後ろから鬼道撃つなり,斬魄刀で刺すなり好きにすればええ。」

ギンの背中は大きくひどく悲しげに見えた。この男のこんな姿を見たのは初めてであった。
何か大きなものを背負っている,そんな男の背中に見えた。

(今,こ奴を討てば戦局は有利になる。この背中を撃ち抜けば・・・)

無防備な背中に鬼道を撃つことも,斬魄刀で切りつけることも容易かった。
しかしルキアの腕は上がらなかった。足元に転がる斬魄刀を拾うことすらできなかった。

「ルキアちゃん・・・?」
沈黙の長さに焦れたギンが振り向くと,大きな瞳に大粒の涙をたたえたルキアが立っていた。あふれる涙をぬぐいもせずにルキアはギンをまっすぐに見つめていた。

「できるわけがないだろう・・・おまえは私の命を救ってくれた。その恩人のおまえを殺すなど私には出来ぬ。おまえからもらった命がある限り,おまえと戦うことなど出来ぬ・・・」

静かに涙を流し続けるルキアをギンは抱きしめ,その華奢な背中をそっと撫でる。自分のために彼女が泣くなど想定外であった。彼女の攻撃を受けて彼女への未練を永久に断ち切るつもりであったのに。

「ああ,あかんなあ。ルキアちゃん,きみって子ぉは・・・きみ,ボクのこと嫌いやなかったん?なんで泣くん?」

その問いには答えずルキアはギンから体を離し,まっすぐその瞳を見つめ言った。

「市丸,もう駄目なのか?尸魂界に戻ることは出来ぬのか?」

きらきらと光る涙がルキアの頬から落ちると同時に冷気のために結晶となり,音もなく砕け散っていく。予想もしていなかったルキアの言葉にギンはとっさに反応出来なかった。

「貴様を待っている者たちだっていっぱいいる。松本殿も,吉良殿も貴様を待っている。それでも戻れぬのか?」

「・・・・・・・」

ギンは質問には答えずルキアの傷一つ残っていない頬を両手で挟み,この世で一番美しい濃藍の瞳を覗き込む。

「ルキアちゃん,きみは?きみもボクを待っていてくれるん?」

ルキアが瞳をそらさずにしっかりと頷く。

「ああ,貴様が望むなら待つよ。貴様が帰ってくるのを。何時まででも。」

甘い感情は伴っていない,感謝と友愛から出た言葉であろう。それでもその言葉は紛れもないルキアの本心だった。

「かえりたいなあ・・・」

つぶやくように言って,ギンはルキアの頭を肩に押し付けるように再び抱き寄せた。帰れるなら,ルキアをからかったり,意地悪して怒らせたり,思いっきり嫌われてもそれでも幸せに思えた日々に帰って行けるなら・・・

「ルキアちゃん,もっぺん,よお顔見せてくれん?」

ギンはルキアを抱きしめていた腕を緩め,向かい合った。ゆっくりとギンの双眸が開いていく。開眼したギンの顔をルキアはまじまじと見つめた。

「・・・・・・・・・・!?」

「どしたん?」

「いや,おまえが眼を開けた顔を見たのは初めてだと思ってな。」

ルキアの頬がやや赤い。ギンの口角がにいっと上がりいたずらっ子のような顔になった。

「なんやのん?あんまりええ男でびっくりしたん?」

「た,たわけ!!うぬぼれるな!!!でも・・・おまえの瞳は美しい色をしていたのだな。夜明け前の淡い空の色に良く似ている。」

ルキアの言葉が心に染みわたっていく,自分の瞳を美しいと言ってくれた少女への愛しさがギンの胸にあふれた。
ギンはそっとルキアの顔に自分の顔を寄せる。

「ルキアちゃんの目ぇに,ボクの目ん玉うつっとるね。」

不意に優しくかすめるようにギンの唇がルキアの唇にふれた。

「な・・・・!?」

突然の口づけにルキアは動揺し,一瞬全くの無防備となった。その隙を逃さずギンの手のひらがルキアの胸元にあてられ,詠唱破棄された鬼道が放たれた。

「縛道の八十九,白伏――」

ほとばしる閃光に眼がくらみ,意識が混濁し,闇に溶けていく。

「ギ・・・・ン・・・・」

驚愕に瞳を見開いたまま,くずれおちるルキアをギンは抱きとめた。

「ごめんなぁ・・・ルキアちゃん・・・きみは,ボクとこんな時間を過したことなんて覚えとる必要ないんよ・・・」

白伏は対象の意識を奪い,仮死状態に落とす高等鬼道であるが,強い閃光で脳に刺激を与えることで,短時間の記憶を消去することも可能だった。
ルキアの生真面目な性格からして,今や敵同士となっている自分に助けられ,心を通わせた記憶など苦しめるだけだと,ギンにはわかっていた。
かつて海燕がルキアに託した心が,残された思い出が,どれほど長い年月ルキアを苦しめつづけたか―――ギンは同じ轍を踏むつもりはなかった。

「ボクは斯波副隊長みたいに,心をきみに残してはいかへんよ。でも,代わりにきみの心をもらっていく。きみとふれあえたときに生まれた心は,ボクだけがもらっていくわ・・・」

おそらくもう二度と会うことはない。しかしどんな結果になろうとギンの心にはもう迷いはなかった。たとえ,記憶に残らなくてもルキアは自分を待つと言ってくれた。自分の瞳を美しいと言ってくれた。最後に自分の名を呼んでくれた・・・それだけでギンには十分だった。

ギンはルキアを倒れていた時の姿で床に寝かせると,右手にルキアの斬魄刀,袖の白雪を握らせた。まだ解放状態の袖の白雪は,ルキアの体をみるみる凍らせていく。

「ちょっと寒いやろうけど,かんにんな。もうすぐきみの大好きなお義兄様と四番隊のうつけがきみのこと助けに来よるから,それまで少しだけ辛抱しててな。」

もっともっと一緒にいたかった。もっともっと話をしたかった。本当は誰よりも優しくしたかった。自分がルキアの好きの一番になれないのなら,大嫌いの一番になってでも彼女の心の中に自分の居場所がほしかった。

「ルキアちゃん・・・ボク,二番はきらいなんや。だから・・・ルキアちゃんボクのことずーっと一番大嫌いでおってや・・・・・・・・・さいなら・・・」

ギンは最後にもう一度ルキアの髪を撫で,思いを断ち切るかのように天を強く仰ぎ見ると,瞬歩を発動させ瞬く間に天蓋の穴を抜け,その白い姿を空に踊らせる。

(ギ・・・・・ン・・・・・)

倒れ伏すルキアの瞳から流れた涙が,音もなく凍りつき儚く砕け散っていった。

〈END〉

あとがき
なぜこの小説を書いたかと言うとギンがルキアをアーロニーロと戦わせた理由を単なる意地悪だと思えなかったのと,白哉が34巻299話でルキアを助けに来た時ルキアの右ほおの深い傷が消えていた上に腹部を貫いていた捩花の三又槍の刃が消えていたからなんですね。もっとも久保帯人様264話から半年ぶりに続き描いたからルキアが瀕死の大けがを負っていたことを忘れていたという可能性もありますが…(だとしたら忘れすぎだろ,Bleachの神と言えどはったおしますよ!)いや,アニメではちょっと傷残っていたのですが・・・
「白伏」の鬼道番号と記憶消去はねつ造です。すいませんorz(土下座)!強い光は短時間の記憶を消去出来ると言うのは本当ですが(汗)
久保帯人様がギンのルキアへの意地悪の理由を説明するside storyをこいねがってしまいます(爆涙)                 
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