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海うさぎ―〈前編〉

自分の中でもあまりにギンルキ不足なので『FADE~』の連載途中ですが原作寄りのギンルキSS投下いたします♪原作寄りなので,ギンとルキアは両想いではありません。前編はやや海ルキ風味です。


『朽木,海うさぎって聞いたことがあるか?
そうか,まだおまえは写真でしか海を見たことねぇんだったな。
ははっ!生き物じゃねえよ,海うさぎっていうのはな……』



目の前に広がる素晴らしい景色を,小高い丘の上から朽木ルキアはじっと飽くこと無く見つめていた。ルキアが生まれて初めて見る海は想像をはるかに超える美しく雄大なものであった。

(ああ,まるであの人の笑みのようだ……)

空も高く紺碧に澄み渡り,眩しいほどの陽の光がどこまでも広がる蒼く輝く美しい海にそそがれていた。
そして,その海と空の境界線に白い小さな可愛らしい波が立ち騒いでいる。

(海うさぎ……海燕殿,私も見ることができました……)

涙で霞む瞳に,小さな白波はまるで海の上を楽しげに跳ね飛んでいく白いうさぎのように見えた。



十三番隊副隊長志波海燕,強く優しく頼りになる,十三番隊の隊士だけでなく他隊の隊士からも尊敬されていたルキアの上司。

流魂街出身でありながら四大貴族朽木家の養子になり,破格の待遇で特別に護廷十三隊に入隊したがために,妬み,羨望,あからさまな嘲笑を受け,まわりから避けられ浮いていたルキアを何くれと無く庇い,鬼道,剣技,様々なことを教え導いてくれた人。

尊敬していた,大好きだった,憧れの人であった……



『海うさぎ!?海の上を飛ぶうさぎですか?』

鬼道の才に比べて剣技の腕が心もとないルキアを心配した海燕の好意で行われていた個人鍛錬の合間の雑談で交わされた何気ない会話であった。
うさぎが大好きなルキアは尊敬する上司の長身を精一杯背伸びして見上げながら満面の笑みで叫ぶように答えた。
その無邪気な愛らしい姿に海燕の口元も綻び,にやりと悪戯っ子のような笑みが浮かんだ。

『ああ,俺が現世駐在勤務をしていた海辺の町の夏の名物でな,
海と空の境界線に風もないのに立ち騒ぐ小さな三角波のことをそう呼ぶんだとさ。俺も駐在期間中はよく見たもんだ。』

『私も見てみたいです……』

ルキアの瞳が夢見るように輝く。
海燕のやんちゃ坊主のような表情が一瞬消え,眩しい物を見るような切なげな色が瞳に浮かんだ。が,彼はすぐに笑顔を戻し,わざと軽い口調で言葉をくちにした。

『そんなら,今度一緒に現世に見に行くか?』

『えっ!?』

ルキアの菫色の瞳が大きく見開かれ驚いたように海燕を見つめる。そんなルキアの戸惑う様子に軽く頬をかきながら海燕は言葉を続けた。

『今度現世に行く仕事があったら,おめぇも連れてってやるよ!』

『そんな……そのような私的な事柄で同行するわけには……』

海燕の言葉に一瞬喜びに輝いた瞳を伏せると,自分から視線を反らせる部下の表情に黒髪の上司はわざと快活な調子で笑いながら言った。
そうしなければその切なげな視線になんとも心が乱れてしまうのだ。

『固いこと言うな!遊びに行くわけじゃねえ。現世視察と勉強を兼ねてってことで,なんとでも理由はつけられるさ!』

海燕の大きな手がルキアの艶やかな黒髪をくしゃくしゃと撫でる。
この大きな手が時折,その美しい髪を優しく梳いてやりたいと思っていることなどルキアには知る由もなかったが……


『約束だ!絶対に海うさぎをおまえに見せてやる!必ずな!』

『……』

輝く太陽のような海燕の笑顔にルキアはくしゃくしゃにされた黒髪の下で涙を隠しながらただ,頷くことしか出来なかった。


しかし,その約束は果たされることはなかった。
その話をしたほんの数日後に,海燕は帰らぬ人となったのだから……

ルキアの腕の中で……



十三番隊第三席と副隊長の殉職という不幸な事件があった後,様々な噂が飛び交った。
そして,副隊長である海燕のそばに最後まで付き従っていたというルキアに対する耳を塞ぎたくなるようなおぞましい噂,心ない中傷―――。

事情を知っている十三番隊隊長である浮竹十四郎と,海燕と共にルキアを気遣ってくれていた席官ふたりがどれほど庇い,護ろうとしても黒い噂は消えることはなかった。
そして,当のルキアは何一つ弁解も言い訳も拒み,静かに耐えていた。

そんなある日,浮竹がルキアを雨乾堂に呼び出したのだ。
人望も実力もありながら身体の弱いこの上司は雨乾堂の自室でにこやかにルキアを迎えた。

「朽木,急なことですまないんだが,用事を頼まれてくれないか?
明日現世に駐在任務をしている者達へ補給部隊が向かうことは知っているだろう?」

「はい,伺っております」

「うちの席官に俺からの書状を渡してきて欲しいんだ」

「は……い?」

ルキアは不思議そうに穏やかな笑顔の上司を見つめた。
それもそのはず,さして重要な書類ではないのならば補給部隊に言づければよいし,重要なものなら席官でもない平隊士の自分が預って渡しに行くのは不自然である。
それに,現世勤務の者に急用があるのなら伝令神機で直接指示すれば良いことなのだから。

「いや,まあ……そのなんだ」

聡明な少女の訝しげな視線に浮竹は視線を逸らしながら困ったように頬をかいた。
その子供のような仕草が海燕を思い出させる。

「今,うちの隊の者が駐在している場所が偶然,海燕がむかし駐在していた場所と近くてな……おまえ,まだ海を見たことがないって聞いたものだから……」

「隊長……」

胸が詰まって言葉を続けられない小柄な部下に浮竹は,照れくさそうに微笑んだ。

「朽木……海燕に心を渡されたのはおまえだ。あいつの好きだった海を共に行って見てきて欲しい。これは正式な上司命令だ」

「はい……」

結局,本心をばらしてしまった嘘の下手な上司の優しい気遣いに,ルキアは泣き笑いのような美しい笑みで返し深々と頭を下げた。



そんな経緯があってルキアは今,海燕との最後の約束を果たすためにこの海辺の町を訪れたのであった。

その土地の夏の名物であるとはいえ自然現象である海うさぎを,自分が訪れた時に都合よく見ることが出来るかどうかはわからなかった。
しかし,ルキアはそれでも良いと思っていた。海燕が若かりし頃,見た海を,ただ見たかったのだ。
時は違っても同じ空間を共有することで海燕の心に近づきたかったのだ。

そして,その想いが通じたのか,それとも海燕の心の導きか,ルキアは海うさぎを見ることができたのだ。
波間を飛ぶたくさんの白い波が描くうさぎたち,海燕とともに見ていたのなら,喜ぶ自分の姿を見てどれほど得意げに笑ってくれたことであろう。

『朽木,あれが海うさぎだ!気に入ったか?』

海燕殿,海燕殿,海燕殿…………
貴方の優しさに甘えて汚れた想いにとりつかれていた私は貴方に優しくしていただく資格など無いのです。

それでも,打ち寄せる波のように募る想いは……

ルキアの瞳に熱い涙が溢れ頬を濡らした。




その時,海燕の死を悼み,己の心と向き合っていたルキアの静寂をよく聞き知っている歌うような声が乱した。

「あらぁ,ルキアちゃんやん!こないなとこで何しとるん?」

驚いて振り向いたルキアの視線の先に信じられない人物が飛び込んできた。
へらへらとした軽薄な笑みを貼りつけた,整ってはいるが狡猾なキツネのような顔の銀髪の死神,ルキアが護廷で最も苦手とする人物三番隊隊長市丸ギンがそこに立っていたのだ。

そんな馬鹿な!

と,思わず目をこすりそうになってしまったが,死覇装を身につけ袖なしの白い隊長羽織を纏い,少女を楽しげに見つめている長身痩躯のどこか飄然としたその佇まいは見間違えようがなかった。

「い,市丸……隊長……なぜ,なぜ貴方がここに……?」

ルキアが驚くのも無理もなかった。隊長クラスの死神が現世に派遣されるのは余程の特殊虚か大虚クラスの強大な虚に対処するか,重大な規律違反をした死神を取り締まるために説得と捕獲を兼ねて派遣されるかのどちらかであったからだ。

そして,その旨は現世に派遣されている死神全てに伝令神機によるメールで伝えられるはずである。緊急連絡を受けていない以上市丸ギンが現世に居るなどということはありえない事態であった。

まさか,サボリ癖が高じて現世にまでやって来たのだろうか……?
ルキアの表情で思考を読んだのかギンはいつもの笑顔に微苦笑を交えながら説明し始めた。

「ルキアちゃん,なんやのその顔,いくらサボり魔のボクかてわざわざイヅルから逃げるために現世にまで来たりはせんよ。
ボクの隊の現世勤務している子ぉの管轄地で手強い虚が出たっちゅう連絡が入ってな,たまたま他の席官が出払っていたからボクが直々に出向いたまでや」

「そうですか……でもどうしてここに?」

「ボクが出向いたとこ,キミのお使い先と場所が近かったんよ。
さっさと済ませて帰ろ思うてたら,ルキアちゃんが近くにいたわけや。キミの霊圧わかりやすいしなぁ」

「……」

色々と間の悪い偶然が重なってしまったものだと,ひっそりとため息をこぼすルキアにギンは腹の中で笑う。

(ボクのこと嘘つきやて思ってるくせに,すぐに信じるんやねえ。ほんまにルキアちゃんは純粋と言うか……)

隊長が出張る程の虚ではないと副隊長の吉良や手すきの席官が必死で止めるのを押し切って無理に現世にやってきたことは言わぬが花であろう。
今,ルキアとギンが立っている場所は四国の高知,そしてギンが応援に行った場所は京都であったことも……

ギンはルキアと並んで海を眺めた。

「それで,キミはこんな所で何しとるん?」

「海を見ておりました。私は海を見たことがなかったものですから」

「さよか……」

会話が途切れたというのに立ち去る様子もないギンをちらりと横目で見て,ルキアは失礼にならない程度に迷惑気な視線を投げる。
今は,この男が苦手だというだけでなく,たとえ敬愛する上司の浮竹にも黎明な義兄朽木白哉であっても,誰であろうとそばにいては欲しくなかったのだ。

誰にもこの時間を邪魔されたくなかったというのに。

もう叶うこともない夢であるが,海燕と共に,もし見ることができたなら一生の宝ものになるはずであった風景。

それなのに,海燕と見るはずであった海うさぎを大嫌いなこの男と共に見ることになろうとは……

(未来のことは,本当にわからぬものだ)

ルキアは再び小さくため息を吐いた。しかし,波間を飛ぶ白いうさぎたちは本当に可愛らしく,たとえ嫌な相手が横にいるにしてもルキアはその場を立ち去り難かった。
瞳に焼き付けたかったのだ,心に刻み付けたかったのだ。

海燕との最後の優しい美しい思い出を……

預かった心が本当に己と共にあるのなら―――


「ルキアちゃん」

海燕との思い出に浸り一瞬,隣にギンが居ることを忘れていたルキアがはっとしてギンを見た。その夢見るような菫の眼差しを見つめ返したギンの顔にちらりと不快気な影が走ったことにルキアは気が付かなかった。

「……は,はい!」

「なんやの,ぼーっとして。まあ,ルキアちゃん,うさぎ好きやから見とれてしまうのも無理ないやろけどなぁ」

「え……?」

ギンの口から出た意外な言葉にルキアは思わず聞き返した。

「なんや,ルキアちゃん知らんで見とったの?
あの沖に見えるこんまい三角波をここの土地の者は海うさぎって呼んどるんや」

「それは,知っておりますが……」

市丸ギンがそのことを知っていたことが意外であった,とは流石に失礼になるかと思い言葉を濁したルキアにギンは屈託なく答える。

「まあ,ボクの知識も受け売りやけどな。キミんとこの隊の,こないだ亡くのうた副隊長さんから以前聞いたことがあるんよ」

「海燕殿から?」

ルキアの顔に微笑みが浮かぶ。苦手な相手ではあるけれど海燕との共通の思い出があるのは嬉しかった。

「キミも副隊長さんから聞いてここに来たんやろ?」

「…はい。以前,海燕殿から聞かされました」

共に見に行こうと言われたことまでは言う必要はないであろう。

「ふうん。なら,あのうさぎたちが,ただ可愛らしいだけの自然現象やないてことも聞いた?」

それは初耳だったのでルキアは問うような眼差しでギンを見つめた。
しかし,ギンはそれ以上教える気持ちはないらしくそのまま海に視線を向けてしまった。諦めてルキアが視線を外した時,ひとりごとのようにギンはつぶやいた。

「知らないなら知らないでええけどな。じきにわかるし……」

思わせぶりなギンの言葉が気になりつつもルキアは再び視線を海に戻した。
再び海を見つめ始めたルキアの艶やかな髪が風にそよぐさまを見てギンはにやりと口角を上げた。
先ほどまで風など,そよとも吹いていなかったことにルキアは気づいていなかった。


どれほど時が経ったのであろう。
海燕との思い出に浸っていたルキアの頬にポツリと何かがあたった。

「…え?」

ルキアは驚いて空を見上げ,驚愕した。
ほんの半時ほど前まで澄み渡っていた空が雨雲に埋め尽くされていたのだ。
ぴかりと稲妻が光り,それに遅れゴロゴロと雷の大音声が大地を揺るがす。

「きゃ……!?」
激しい雷鳴に思わず耳を押さえ,ルキアは不覚にも怯えた声を上げてしまった。

大嫌いな雨…あの日と同じ…

その時,頭からふわりと何かが被せられた。
それがギンの纏っていた隊長羽織だと気づくよりも早く肩を抱えられるようにしてルキアはギンに引っ張られ,わけも分からず走り出していた。

海に落ちる稲妻,轟くような雷の音にすくんだ身体はいつもなら振りほどく忌まわしい腕をはねのけることさえ忘れていた。

「嵐が来るで……それも相当大きいのが」

ギンの歌うような楽しげな声が耳元に響いた。



to be continued…

海うさぎ〈後編〉



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