ボク色の靴下に入ったのは…

毎年クリスマスイブにギンは愛妻ルキアに暖かなもふもふ靴下を贈ります。それにはとても大切な意味があるのです。
オレンジ色の優しい炎が揺れる暖炉の前で暖かそうな,でも少々いびつな編み目のグレーのセーターを着た市丸ギンは,愛妻ルキアを膝に乗せ,今宵も現世で買ってきた絵本を手に取った。パールピンクのモヘアのタートルネックセーターを着たルキアの首にはキラキラと光る雪の結晶の形のペンダントが光っていた。

そう,今宵はクリスマスの夜,セーターもペンダントも昨夜互いに贈ったクリスマスの贈り物であった。
ルキアの方はもうひとつ,タータンチェックの赤い巻きスカートの足元から覗くのは見ただけで暖かそうな真新しい銀色の靴下,毎年クリスマスにギンから贈られるプレゼントであった。

もふもふ靴下はギンがルキアと付き合い始め,そして結婚した今もクリスマスには必ずメインの贈り物とは別にルキアにプレゼントする恒例のアイテムなのである。

ルキアはギンがクリスマスイブに贈ってくれたものはすべて必ずクリスマス当日に身につける,無論ギンもである。たとえ,去年は手袋,一昨年はマフラーであっても室内で一日中身につけるのが毎年の恒例行事であった。
ギンはたとえ今が真夏であったとしても身につけるだろう。何しろそのすべてがルキアの手編みなのだから…

そして,クリスマスにはギンが厳選した絵本を朗読するのもまた恒例のことであった。
昨年は『みんな…おやすみ』そして今年は…

ギンがルキアの目の前に見せた絵本の表紙を見ただけでルキアの顔に笑みが広がる。

「おお,いもとようこ殿の絵本か?この可愛らしくも懐かしい気持ちになる絵・・・今回はどんな話だ?」

流魂街最下層区域で過酷な幼少期を過ごしたルキアは,早いうちから大人び,人に甘えることを知らずに育った。そのせいかルキアは人に本当の思いを伝えることに対してはいまだに不器用である(意地っ張りな性格も災いしているが・・・)

市丸ギンと付き合い始めた後も,なかなか甘えてくれることはなかった。
そんなルキアが唯一自分からギンの膝に乗り,甘えねだってくれること,それが本の朗読だった。

「それは読んでからのお楽しみや…」

ギンはにっこりと微笑み,ルキアの大好きな甘く優しい声で朗読を始めた。

タイトルは『きつねいろのくつした』


ゆきがふってまっしろくつもりました。
クリスマスに靴下にプレゼントを入れて貰える人間の子供が羨ましい,一人ぼっちの子ぎつね,こんた

『くふっ,ぼくもプレゼントもらおうっと』

こんたはお母さんから教わった化け方で大きな靴下に化けます。それはきれいなきつね色。

そこへ,道に迷い凍えた可愛いうさぎの女の子がやって来ました。
うさぎの女の子はきつね色の靴下を見つけると

『わあっ,おおきい!でもあったかそう。わたしさむくてさむくてしかたがなかったの。』

といいながら靴下の中にもぐりこみました。

うさぎの女の子は暖かくて気持ちよくてすぐにすやすやねむりはじめました。

靴下になって眠っていたこんたは

『なにか,はいってきた・・・・・』

と思いました。

『だれかが,プレゼントをいれてくれたんだ・・・・きつねのぼくにもどって・・・・ありがとうっていわなくちゃ・・・・』

こんたはねむりながらきつねにもどりました。

『プレゼントありがとう・・・・でも・・・・ぼく ねむい・・・・』

こんたはうさぎのおんなのこを,しっかりとかかえると,さっきよりぐっすりねむってしまいました。

あさがきました。
ゆうべのゆきがうそのようにやんで,おひさまのひかりが,あなのおうちのなかまで,きらきらあかるくてらしました。

こんたとうさぎのおんなのこは,はっとめをさましました。

『あっ,ああっ!』

『わっ,わわっ!』

『あなた だあれ?』

『きみこそ だれだ?』

びっくり,かおをみあわせました。でも,すぐに うれしそうにいいました。

『ぼく,きつねの こんた。』

『わたし,うさぎの みいみ。』

『くふっ,すてきだあ。ともだちがプレゼント!』

『うふふっ,わたしもおともだち ほしかった』

『いこう!』

『うん!』

こんたと みいみは きらきらひかるゆきのなかを かけだしました。
しっかりと,てをつなぎあって・・・

『みいみ いえまで おくって いくね』

『でもね,それから もっともっと あそぼう ともだちだものね,ずっとずっと いっしょ。』

『そうさ,ずっとずっと なかよしだものね,いっしょ。』


ギンは朗読を終えるとルキアのほっそりとした身体を背後からすっぽりと包むように抱きしめた。ギンのとじられた瞳から幾筋も幾筋も涙が伝い,ルキアの髪の毛を暖かく濡らす。

「ギン…?どうしたのだ・・・?泣いているのか?」

「ルキアちゃん…ボクなぁ…この絵本見つけた時うれしゅうてうれしゅうて,この本抱きしめて泣いてもうたんや…」

「ギン・・・・」

「なんだか・・・ボクらんこと許されたような気ぃがして,めっちゃ嬉しかったんよ・・・」

「許すとは・・・?何故,私とおまえの関係が他人に許されねばならぬのだ?」

不思議そうに自分を見上げるルキアを背後からきゅっと抱きしめギンは答えなかった。

きつねとうさぎが恋をするくらいキミとボクとの幸せは奇跡・・・・

たまたま,仕事で現世に出向した時に街で流れていた曲をギンは思い出していた。


ひとりで思う寂しさは結婚しても同じさ・・・
キミが欲しい・・・今でも欲しい・・・キミの全てに泣きたくなる
もしもキミに会わなければ違う生き方ボクは選んでた・・・・


そんなフレーズの入った曲を現世で聞いた時,ひどく胸が痛んだことを思い出す。
ルキアとの幸福な暮らし。優しい愛おしい日々・・・

それでも,この胸の中に確かに存在する哀しみは夢のなかで見たあの透き通った輝きを持つ魔の玉にも似て・・・

あの玉は・・・いったい・・・


そんな思いを断ち切るようにギンは明るくルキアの耳元に囁く。

「可愛い子ウサギツネが生まれるとええなあ。」

「この二匹はまだ子供ではないか,気が早いやつだ。」

クスクスと笑うルキアを優しく背後から抱きしめながらギンはルキアのふんわりと優しくふくらんでいる腹部をそっと撫でた。

「気が早うなんかないで…」

ルキアも肩越しにギンに微笑みかけるとギンの大きな手の上に白い小さな手を優しく重ねた。


毎年暖かな銀色の靴下に入っているキミはボクへのプレゼント,永遠にボクだけに贈られる大切な大切な,世界からの至上の贈り物…

そう愛らしい子ウサギツネに会えるのはもうすぐ…



               〈END〉

〈あとがき〉
『きつねいろのくつした』  
作こわせたまみ 絵いもとようこ ひかりのくに傑作絵本集4 
クリスマスに辛うじて間に合ってよかった『ギンルキは永遠☆』です♡             
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