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素直に I'm Sorry 〈前編〉

ギンとルキアがまだ付き合い始めて間もない,初めて迎える冬の出来事。恋人同士として迎える初めての冬は当然期待してしまう恋人の手編みのマフラー,無論大いに期待していたギンなのだが……
春はまだ遠い寒い寒い冬の朝―
瀞霊廷にもうっすらと雪が降ったある日のこと護廷十三隊三番隊隊舎でちょっとした珍事が起こっていた。

「ふー,今日も寒いなあ。おはようございます」

たとえ,隊主室一番乗りであっても律儀で礼儀正しい三番隊副隊長吉良イヅルは挨拶をしながら扉を開けた刹那,信じられない人物の声を聞いた。

「ん――おはようさん。イヅル」

「―――――ええっ!!??」

更にイヅルは自分の目に飛び込んできた光景を見て目を疑った。遅刻,早退常習犯の三番隊隊長市丸ギン,己の上司がすでに隊主室に在室しているのである。
イヅルは慌てて掛け時計を見上げる。この状況を説明するには自分が遅刻をしていることしかありえないと思ったのだ。
その様子で部下が何を考えているのかあっさりと察したらしくギンはやや不機嫌そうにくちを開いた。

「慌てんでも,遅刻やないで。ボクが早う来ただけや」

「た,隊長,何やってらっしゃるんですか?」

在室しているにしろ長椅子に寝転んで本を読み耽るギンの姿に,やや平常心を取り戻したイヅルは,いつもは眠たげな瞳を見開いてギンに問いかける。
なぜならギンのまわりにおよそ,当人には似つかわしくないものが散乱していたからだ。それは紙袋いっぱいの毛糸,他にも膝の上,足元にも転がるピンクとグレー,白に紫色の毛糸玉。

「ちょっと,思うところあってなぁ……」

ちらりと部下を見やりながら,そっぽを向くギンの顔にいつもの締まりのない笑みはなく,ややふてくされたような表情である。手にとっている本を見ると「やさしい編み物」と書かれている。上司の眉間による微かな皺と仏頂面から判断し,どうやら,この毛糸と手にしている本は想い人からの預かりものではなさそうだ。

(ああ,なるほど……)

聡明な副隊長は密かに合点がいった。
おそらく上司の不機嫌の原因は六番隊隊長のせいであろう。正確には彼の首に巻かれていたあるモノ。


それは昨日の早朝のこと――
山本総隊長からの呼び出しで珍しくギンは早朝出仕し,イヅルと共に一番隊隊舎に向かっていた。
その時,隊舎廊の先から足さばきも優雅に六番隊隊長朽木白哉が渡ってきたのである。いつもに違わぬ隙のない身ごなし,家訓ゆえ常に身につけることを旨とする美しい黒髪に留められた牽星箝と首元に巻かれた銀白風花紗。しかし,その日の彼の首元に巻かれた銀白風花紗がいつも身につけているものとは材質も,そしてよくよく見れば色見も異なっていた。
そう,誇らしげに朽木白哉の首元に巻かれていたモノは,素朴な編み目の純白のマフラー。編んだ人物はどう考えても,ギンの最愛の恋人にして,口惜しいことに白哉の義妹である朽木ルキアであろう,まちがいなく。そもそも,彼女の手編みのものででもなければ,白哉が家訓に背いてまで季節を問わず常に身につけている銀白風花紗を外すわけもないのだから。

「おはよう,市丸」

わざとらしく首元のマフラーの位置を直す仕草が憎らしい。氷のような怜悧な美貌が引き立つ無表情が今日は影をひそめ,口元にはうっすらと笑みが浮かんでいる。

「おはようさん,朽木はん…」

見たくもないが視線が勝手に首元に向かう。その視線を十二分に意識しつつ白哉は首に巻かれた白いマフラーを指先で愛しげに撫でる。

「今朝はことのほか冷え込むとは思わぬか?」

「小春日和でぽかぽかや,思いますけどね……」

ギンのふてくされたような言葉を無視して白哉は言葉を続ける。

「寒い日にはやはりマフラーが一番だと思わぬか?特に己のために心を込めて編んでくれた手編みのモノは格別だ」

その愉悦に満ちた,したり顔にギリギリと胸のうちでは歯噛みしながらギンはそれでもどうにか神鎗を抜刀することを堪らえ顔面のひきつりを,常にたたえている笑みで押さえ込みながら辛うじて言葉を返す。

「そらよろしかったですなぁ。ボクは忙しいからこれで…」

なんとかいつもの表情を崩さず,白哉の横を通り過ぎようとしたギンに追い打ちをかけるような白哉の若干笑いを含んだ楽しげな声が響いた。

「今朝,あの子が手ずから私の首に巻いてくれたのだ。本当にルキアは愛情深い子だ……そうは思わぬか(自称恋人の)市丸」

「……」

流石にもう返事が出来ず,背中に巨大な火柱がたつほどの怒りに震える上司の背中,小刻みに震える隊長羽織を見つめながら,イヅルは掛ける言葉もなかった。なにしろ一部始終を見ていたものの隊長同士の目に見えぬ激しい凄惨な攻防に竦み上がってしまっていたのだから。
悠々と歩き去る白哉の姿が見えなくなるとギンは足音も荒く隊舎廊を渡っていった。すれ違う隊士や席官たちの挨拶にろくろく返事もせず,まるで競歩のように進んでいくギンの顔からいつもの薄ら笑いが消えていた。
その鬼気迫るめったにお目にかかれない(かかりたくない)三番隊隊長の怒髪天の無表情に恐れをなした隊士たちはその日一日,三番隊隊主室に近づけなかったほどである。


そんな経緯があったため,この毛糸玉だらけの目の前の状況があるらしい。
どんなに嫌われ避けられてもめげず,口説きに口説き,ねばりにねばり,手に入れるために来世と来来世の運まで使い切ったに違いないと噂されるほど執心している最愛の恋人のルキアが恋人のギンにではなく義兄である白哉に手編みのマフラーを贈ったという事実,上司のやりきれない立場と落胆は男として同情を禁じ得ない。しかしこれは……嫌な予感がする。ギンのサボりに関してはすこぶる勘の良い副隊長,ほぼ確信してはいたが一縷の望みを賭けて口を開いた。

「あの……隊長,まさかこれって」

「そうや,手作りマフラー作ってルキアちゃんにプレゼントするんや!」

(ああ…やっぱり……)

軽いめまいを感じながらイヅルは額を押さえる。悪い予感はいつだって当たる。どうやらルキアの手編みのマフラーを見せつけられた悔しさは正しいのか間違っているのか,なんとも微妙な行動に上司を駆り立てたらしい。すなわち自分とルキアとのラブラブマフラー自主作成。ルキア好みの可愛らしいマフラーをこしらえて渡すついでに自分のマフラーに話をもっていこうという遠大かつ遠回しな計画である。

「そういうことやから今日一日,ボクは留守やと思うてや!」

再び視線を本に移し読み始める上司の周りに転がる毛糸玉を見ながら,イヅルはこれでますます上司の仕事が遅れるだろうことを思い,深々とため息をついた。


今日一日上司は居ないものと諦めたイヅルが仕事に専念し始め,一刻ほどたった頃,押し黙って編み物に集中していたギンが不意にくちを開いた。

「イヅル,まだ完成やないけど,ちょっと出来見てくれん?」

「はあ……」

ちょうど自分の仕事も切りの良いところであったので,イヅルは席から腰をあげギンのもとに近づく。

「えっ…!?わあぁ―」

世辞の一つも言えば書類を一枚くらい上げてくれるかなと作成途中のマフラーを覗きこんだイヅルは思わず感嘆の声を上げた。
二本の棒針を使い,リバーシブル編みで,白地にピンクのウサギとグレーのキツネが仲良く並んでいるデザインの可愛らしいマフラーがすでに30センチほどの長さで編まれていたのだ。編み物が初めてのくせに三色の毛糸を巧みに駆使して器用に編まれたマフラーはまだ途中とはいえ,プロ並みといってもいいほどの見事さであった。さすがは天才市丸ギン。彼の広大無辺の潜在能力と無駄な器用さはルキアのためならば,いかん無く発揮されるのである。そう,仕事には全く反映されないけれど……

「本当に器用ですね…この手の編み方は素人は編み目がかたくなりがちなのにふわふわですし」

「世界一愛情のこもったマフラーにするんや!今日中には仕上げて明日にはプレゼントできそうや♪」

部下の素直な感嘆の声に満足気に笑いながらギンもドヤ顔で宣言する。
確かに編み物初心者のくせに一刻(約2時間)でこれほど複雑な模様入りのマフラーを30センチも編めるのだから本当に今日中に仕上げてしまえそうである。しかし,これで間違いなくこの上司は今日は書類に捺印すらしてくれないことが決定してしまった。
再び,器用な指さばきで編み物を再開するギンの満足気な笑みに,ひきつった笑顔を返し,イヅルは見事な仕上がりになりつつあるマフラーと上司の机の上の山積みの未処理の仕事を交互に見つめながら再び深々とため息をつきつつ席に戻っていった。


翌朝,ギンは昨日と変わらぬ時間に隊舎に出向した。隊舎廊を渡る足取りが若干早いのは,一昨日も,昨日も顔を見ていない,つれない恋人に完成した手編みのマフラーを渡すためである。白地にピンクのウサギとグレーのキツネが可愛く並び,両端の房は菫色,ルキアの瞳の色を使ったマフラーはきっと喜んでもらえるに違いない。
そして,ギンはこの贈り物を渡すついでに(本当はこちらがメイン)自分にもマフラーを編んでくれるようルキアに,さり気なく頼もうと思っていた。ルキアは快諾してくれるだろう。以前の手作り弁当のこともある。
ルキアが義兄である白哉に恋人の自分よりも先に手編みのマフラーを渡したのはきっと自分のマフラーを上手に作るための練習に違いないと,ほんの少しギンは自惚れてもいた。そして,自分がここまで下手にでているのだから少しばかりルキアに今回のことを意見してもいいかもしれないとも思っていた。
つきあいだしてから迎えた初めての冬。実はギンは密かに期待していたのである。ルキアの手編みのマフラーを首に手ずから巻いてもらうことを…それを白哉に先取りされるとは。

(ほんの少しなら拗ねてもええかもしれんなあ…)

普段,様々なこと(デートの回数,上司への態度,義兄への敬愛,男性死神との仕事上の付き合い…etc.)で目一杯拗ねまくっているくせに,まるっきり自覚のないギンはそんなことを考えながら,愛するルキアのいる十三番隊隊舎へと歩を進めていると,不意に背後から声をかけられた。

「やあ,おはよう,市丸。こんなとこで会うなんて奇遇だなあ!」

よく聞き知った男の上機嫌な声。ギンに声をかけたのは,病弱ながら穏健篤実,隊士からの人望,信頼も厚い(三番隊隊長は除く)ルキアの上司十三番隊隊長浮竹十四郎であった。
これから向かう十三番隊の方角ではなく背後から声をかけられ,やや面食らいながらも山本総隊長にでも呼び出されていたのかと思いギンは不承不承ながらも挨拶を返そうとふり向いた。

「…はぁ,おはようさんで……っ!?」

振り向いて浮竹と対峙した瞬間ギンの言葉が途切れ,眼が開眼した。
そう,彼の首元に巻かれていたのは見覚えのある素朴な編み目の白緑色のマフラー。淡い緑色は浮竹によく似合っている。誰が編んだのかは,この得意顔を見れば訊かずともわかる。

「いやあ,今朝も寒いなあ。それにしてもどうしたんだ?おまえがこんな早い時間に隊舎にいるなんて」

「……ボクかて隊長ですから,仕事で早出することかてありますわ」

内心の動揺を押し隠しながらギンは浮竹の首まわりに視線をやらぬようにそっぽを向いた。それでもちらりと走らせてしまった視線を見逃す浮竹ではなかった。

「いやあ…昨日,朽木が,プレゼントしてくれた手編みのマフラーなんだ♪あの小さな手で一生懸命編んでくれたかと思うと室内とはいえ外せなくてなぁ」

「それはそれは……ルキアちゃんはえらい敬老精神に富んでおるみたいで……」

精一杯の皮肉も上機嫌のこのルキアの上司には全く通じない。一見ひとのよさそうな笑みをたたえながら懐手をしつつギンを見つめる。

「まあ,残念なことに俺だけがもらっているわけじゃあないがな」

「へえぇ!?なんですって?」

思わず素っ頓狂な声が漏れ,ギンは思わず浮竹に詰め寄る。そんなギンの慌てぶりを心底愉快気に見つめながら浮竹は言葉を続けた。

「なんだ知らないのか,市丸?朽木が昨日から日頃お世話になっている者たち全員に手編みのマフラーを配っていること」

そんな話は寝耳に水だ!ここまでくると流石にやや楽観的な気持ちでいたルキアの手編みのマフラーへの推測は全くの的外れだと,どんなに鈍くても合点がいく。明らかにルキアは恋人の自分を避けている。ギン以外の親しい者たちだけに手編みのマフラーを渡しているのだと……

「相手に合わせたイメージカラーのマフラーを渡しているらしいんだ。やちるのもらったマフラーなんか髪の色と同じ薄紅色でえらく喜んでいたぞ!後でもらったみんなで集まって朽木を中心に記念撮影をしようかと思ってるんだが……あ,おい,市丸?」

うんうんと一人頷きながら話していた浮竹が顔を上げた時ギンの姿はもう消えていた。



to be continued…

素直にI'm Sorry 〈後編〉






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