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求めるままに―イヅルの憂鬱

ラブラブの休暇を取るはずであったギンとルキアは六番隊,十三番隊の過保護隊長コンビの陰謀で,ギンに強制出張命令が出され,引き離されてしまっています。ギンの不在の寂しさにオーバーワークにも気づかぬほど疲弊しているルキアを切なく見つめるイヅル君の話です。
自覚し損ねた恋がどうにも出来ない時点で,往生際悪く燻っているのが我ながら女々しい。なかったコトにしてやり過ごすのが賢い生き方というものなのに…
振り返ると,僕はいつだって一番欲しい物を無意識に選ばない生き方をしてきたような気がする。

すうすうと静かに響く規則正しい寝息。
三番隊隊主室に書類を届けに来て,処理が済むのを待つ間に長椅子でうたた寝をしてしまった朽木さんを僕はじっと見つめていた。

可哀想に…ここ数日ろくに寝ずに隊務についているのだ,ひどく疲れているに違いない。

本当なら,彼女は今頃は市丸隊長と休暇を取っているはずであったのに。
現実は,市丸隊長は急遽任命された虚討伐部隊隊長として遠征の真っ最中である。
本来は,十三番隊の浮竹隊長が討伐隊の責任者であったのだが,急に体調を崩されてしまった(らしい)。そのため浮竹隊長に代わり,(なぜか)六番隊の朽木隊長の推挙を受けて休暇直前で何の仕事も入っていなかった市丸隊長に白羽の矢が立ったのだ。
しかし,浮竹隊長の代わりに嬉々として虚討伐に向かいそうな更木隊長率いる十一番隊は別件の遠征予定,十番隊の日番谷隊長は現世に出張予定,その他隊長達も何かしら急ぎの仕事があり,遠征の責任者代行に市丸隊長しかいない,などという状況がどうにもおかしい。これはどう見ても,市丸隊長と朽木さんの休暇を邪魔するために,周到に用意されたお二人の陰謀であった。

朽木さんのことで,市丸隊長がお二人と揉めていることは周知の事実だが,まさかここまでされるとは…

それにしても,あの過保護隊長コンビだとて,ふたりをを引き離そうと画策すればするほど市丸隊長はともかく朽木さんが疲弊していっていることに気づかないわけもないだろうに。ままならないのが恋の道…
最も,市丸隊長に関して言えば自業自得のところも多分にある。
ただでさえ,恋敵が多いと言うのに市丸隊長はその敵愾心を煽りこそすれ,状況をまるくおさめようとする気がまるでないのだ。それは誰に対しても情け容赦ないほど悪い意味で平等だ。しかし,平隊士に対してならともかく隊長格二人を敵に回してそうそう無事に済むわけがないではないか。
でも,それでも市丸隊長はそういう態度を貫くのだろうなと思う。これまでもこの先も。
朽木さんのためなら世界中を敵に回して構わないと本気で思っているのだから…


僕が朽木さんと初めて出会った時には彼女の傍らには忠犬のように彼女を護る赤髪の幼馴染がいた。
両親の墓参中に降って湧いたように現れたふたりの男女,あまりにも想定外な場所で出会ったので一瞬幽霊かと思ったくらいだ。
朽木さんの連れの阿散井恋次は良い奴で,後に僕の親友になった。熊のようにでかい男に人形のような華奢な少女の組み合わせ,お似合いのふたりだと思っていた。思おうとしていた。
彼女が尸魂界でも屈指の名家にして四大貴族の一柱である朽木家の養子になった時,僕は阿散井くんに彼女に関わらないように忠告をした。個人の恋情など絶対的権力の前には蟷螂の斧,いくら望んでも叶わない。叶わないのなら最初から無かったことにしてしまえばいいのだ。彼の為にそう言った。
下級貴族の出自でも,ある程度の噂は耳に入ってくる。僕は貴族が,いわゆる下層階級出の子女を養子として迎え入れる場合は余程の実力と才能の持ち主か,そうでなければ,愛人では外聞が悪いため,そういうカタチにしたかのどちらかであることをよく知っていたから(実際はどちらでもなかったらしいけれど…)

でも,それは本当に彼への忠告であったのだろうか…

今思えば,僕は無意識のうちに阿散井くんを朽木さんから引き離したかったのかもしれない。
そして現在―彼女の隣にいるのは阿散井君でも,彼女を養子にした朽木白哉隊長でもない。長い時を過ごしてきた幼馴染の存在も大貴族朽木家の威光も全て無視し,ただひたすらに朽木さんを求め続けた僕の上司三番隊隊長市丸ギンが彼女の恋人として常に彼女の傍らにいる。

どういう経緯で市丸隊長が朽木さんを好きになったのかは僕にはわからない。
年も立場も全然違うふたりがひかれあう要素がそもそも僕には見当もつかなかった。
市丸隊長が彼女を好いていると,部下である僕に堂々と宣言した時も最初はお得意の悪い冗談だと欠片も信じなかったくらいだ。
なにしろ,彼が今まで交際をしてきた豊満系のお相手たちと朽木さんはまるでタイプが違っていたし,一般隊士を数に入れないにしても,高レベルのライバルが多すぎた。それに市丸隊長はなぜだか知らないけれど初対面の時から朽木さんにめちゃくちゃ嫌われていたらしい(本人は認めていない)。
そもそも,我が上司は障害があるほど燃え上がるタイプではない。むしろ面倒事など持ち込まれる前にさっさと手を引いてしまうドライな男である。
それなのに,彼女のこととなると喧嘩上等まっしぐらなのだ。その辛辣な物言いで相手を激怒させることなどしょっちゅうだ。

「ルキアちゃんとセットならトラブル大歓迎や!」

9割9分以上自分が招き寄せているくせに,そんな風に嘯く上司に僕は心底呆れると同時に危うくほんのりと感動を覚えそうになった(すぐ打ち消したけど)。
元々はクールな質なのだから,ライバルたちへの対応だってもっとそつ無くこなせるはずなのに,そんな風にムキになって相手に突っかかっていくなんて,らしくなさすぎる。
華麗な恋愛遍歴(本人曰く黒歴史らしい)を誇る市丸隊長がこんな青臭い態度をとるのは,僕が知るかぎりでも初めてのことだ。

それでも僕は隊長の本気を掴みかねていたのだけれど…


交際する以前,朽木さんにこっぴどく拒絶されて平手打ちまで受けていながら,にこにこと笑み崩れ,そもそも欠片もデレ要素がないのに「ツンデレ最高や!」などと寝ぼけたことをほざいている病気レベルのポジティブ思考の上司に僕は一度尋ねたことがあった。

「それだけ拒絶されて,よくまあ前向きに考えられますね…どうして朽木さんをそこまで追いまわすんですか?」

「ボクの初恋なんやもん!」

「隊長,四番隊に行ってください…」

そのときは散々,女性を泣かせてきた男が何を寝言こいているのだと思い,会話を打ち切ったのだけれど…他のことはすべて飄々と要領よくこなし,上手く物事を捌いていく市丸隊長が,朽木さんのこととなると本当に不器用この上ないのだ。意地悪を言ったりいたずらを仕掛けたり気を引くためなら手段を選ばない。ようやく相手をしてもらえたときは拗ねるわ,ごねるわ,我がままは言うわ…本気で好きになってもらう気あるんですか???と上司でなければ正座をさせて延々と説教をしてやりたいくらいだった。本当に常識のない小学生の方がまだタチがいいほどの体たらくを散々に見せられた。
そんな年月が続いて,カッコ悪いなこの人…と何十回目かの溜息をついたとき,すとんと思うところがあったのだ。

(これってまんま子供の初恋だ…)

今までの恋愛だと思っていたものなんかすべてリセットしてしまうくらい心奪われて,他のことが眼に入らなくなって,カッコ悪いほど一途で,どんなに嫌われても諦められないくらい焦がれるほど好きで…
応援する気はないけれどうっかり上司の言葉を信じそうになってしまうほど,彼の朽木さんへの想いは直情的で何の打算もなかった。
とはいえ,上司としては尊敬しているけれど,ボクが女性であったなら初めから寄り付きもしない異性であることだけは断言できる。つくづく追い回されていた朽木さんに同情する。今もそれは変わってはいないのだけれど…
奇跡的な交際が始まってから暫く後,僕は朽木さんに訊いてみたことがあった。

「朽木さん,市丸隊長のどこが良くて付き合っているの?」

少々不躾ではあるけれど同期の気安さで何気なく聞こえるように装って僕は尋ねた。

「そうだな。どこがいいのであろう。性格は尊大で捩じ曲がっているし,いい年をして我儘だし,子供っぽいし,嫉妬深いし,仕事は貯めこむし…これほど褒めるところがない奴も珍しい」

朽木さんはくくっ…と隊長に少し似た笑いを浮かべ,僕を悪戯っぽく見つめた。
その可愛らしい笑顔に,僕は心臓が騒ぎださないように手元の書類に目を通す振りをする。

「しかしな,吉良殿,あやつの性格は私を含めて周りに対して多大な迷惑をかけるし,とんでもなく傲慢で我儘で自分勝手で自己中心的であるのは認めるけれど…」

えらい言われようだなと…そっと盗み見るように見た朽木さんの顔を僕は一生忘れないに違いない。
困ったような,照れているような,それでいて満たされた,花がこぼれるような優しい愛らしい笑み。

「あやつの愛情は真っ直ぐで曇りがないのだ。歪んで捻くれてはいるけれど純粋なのだ。時にいき過ぎて私を困らせることも多いけれど…その想いにどれほど私が救われているか…どれほど私を幸せにしてくれているか,きっとあやつは思いもせぬのだろうな」

続く朽木さんの言葉に,不意に上司の顔が浮かんだ。何かカチリとボクの心のなかでリンクするものがあったのだ。

ああ,この笑顔なんだ,きっと。

噂に聞いたことがある朽木さんの残酷な天使の笑み…
市丸隊長の前では決して見せず,隊長が見ていないとわかっている時にしか見せない市丸隊長への想いに溢れた笑顔,我こそはと自惚れて朽木さんを口説こうとする数多の輩の恋心をことごとく打ち砕いてきた輝くような幸せな笑顔…そして,そんな顔をさせたのが自分であったなら,と心から焦がれ願わずにいられない笑顔…
朽木さんは笑顔のまま言葉を続けた。

「私はギンが好きだよ。生きて,あやつにめぐり会えたことを神と言うものがいるのなら感謝したいくらい…ギンのそばにいるだけで,こんな私でも生まれてきてよかったと心から思えるのだ」

死神が神に感謝すると言うのもおかしなものだと,朽木さんは笑った。
その笑顔があまりに透明で綺麗すぎて,僕は勝手に赤くなる頬を見られないように仕上がってもいない書類を揃える振りをして顔を隠した。
本当にこの笑顔を見て朽木さんを口説けるような鈍感な奴は尸魂界中を探したっていやしないだろう。
ああ,だから残酷な天使の笑み,恋した瞬間に破れていることを思い知らされる……

「ふ――ん。すごいのろけだねえ。朽木さん,そのこと隊長に言ったことあるの?」

「いいや,私と付き合っていながら,いまだに自分は片思いのままのようだなどとぼやくくらいだから私があやつのことを好いているなんて微塵も気づいておらぬのだろう。しつこい求愛に根負けしたから仕方なく交際できていると本気で思い込んでいる」

それはよく分かる。いまだに彼女もいない僕に小学生レベルの恋愛相談を持ちかけるくらいなのだから。

「でも吉良殿,どうか内緒にしておいてくれ。こんな言葉を私が言っていたと知れば,ただでさえ調子の良いあやつを更に図に乗せてしまう」

約束だぞと,朽木さんは笑って僕に指切りまでさせた。絡まる指先から鼓動が伝わってはいないだろうかと内心焦りながら,名残惜しげに絡みたがる指をそっと外し,わかったよと僕は笑い返したのだった。


本当に,隊長,あなたはこんなにも愛されているんですよ。朽木さんとの約束だから(それだけじゃないかもしれないけど)絶対に教えてはあげませんけどね。
くしゅん,可愛いくしゃみに我に返った。朽木さんはまだ眠っている。寒いのであろうか僕は仮眠用の毛布を持って,そっと朽木さんに近づいた。横に座り毛布をかけようとした時,不意に朽木さんの身体が揺れ,僕の胸の中にその小さな体がすとんとおさまった。

「!?―――」

思わず,肩を抱くように抱きしめる形になってしまった。これは不可抗力だ。
人形のように整った小さな顔が,間近に迫る。透き通るようになめらかな白磁の肌,頬に影さすほどの長いまつげがとても綺麗だ。本当に近くで見れば見るほど綺麗だなんて反則だ。
花のような甘い香りがほんのりと鼻孔をくすぐる。薄く開いた薔薇の蕾のような唇から目が離せない。顔が近い,唇がふれたとしてもきっと,それも不可抗力…
吸い寄せられるように,そっと顔を寄せた瞬間,朽木さんの唇に柔らかな笑みが浮かんだ。

「…ん…ギン…」

一瞬で冷却される想い…幸せな人はどうしてこんなにも残酷で無敵なのだろう。
僕は彼女を仮眠用の毛布で包むと己の肩にそっと小さな頭をもたせかけた。
ああ,彼女の夢さえもあなたのものなんですね。でもいい,今だけでも,身代わりの温もりでも,彼女と分かち合えるなら,この位の役得,眼を瞑ってくれますよね。

市丸隊長,早く帰ってきてください。

僕はあんがい賢い生き方というものができない男のようです…



         END




あとがき
イヅルは大好きです!コクの世界観設定上,不憫草も花も実も生い茂り咲き乱れ成りまくっていますが…全て愛です!!
都々逸で言えば 君が好きだよ 本当だよ くらいには!!
ギンルキ【R18】バレンタインあたりには出せたらよいな…うん…思います
m(_ _)m

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