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哀しき花の護り人

ギンの意地悪な態度と言葉に心傷つき逃げ場所を求めたルキア。はたしてギンの行動の真意とは…
三番隊隊主室の扉を音を立てて閉めた後,朽木ルキアは必死で唇を噛みしめ,涙をこらえ駆けだしていた。幸いなことにもう昼休みだった。十三番隊隊舎に戻ってこの情けない様を他隊士に見られなくて済む。

市丸ギン,何故あの男は私の心を容易くかき乱せるのであろう。

義兄朽木白哉の亡き奥方に似ていると言うだけの理由で養子に迎えられた自分への下賤な中傷も,いつまでも席官になれない自分に対する遠回しな嫌味や皮肉も,そんなものは,今まで散々陰で言われてきたというのに。無視しておればよい,やましいことなど何もないと今までは毅然として立っていられたのに。
実力もなく,このような分不相応な待遇を受ける資格もないことは自分でも重々承知だ。
私は大丈夫だと,傷ついてなどいないと言い聞かせていた。

それなのに,なぜこんなにもやすやすとあの男は私自身が無視しようとしていた私の負の感情を引きずり出し弄ぶのだろう。
何故あの男の言葉だけ無視できないのであろう。
まっすぐに頭を上げて立っていること,それだけが私のプライドだったのに。
そして,何の権利があって,何が楽しくてあの男はこんな取るに足らぬちっぽけな私の矜持さえ踏みにじるのであろう・・・

あの男と邂逅し,言葉を交わした後は誰とも顔を合わせることなど出来ない。
足元が揺らぎ立っていられない,自分の居場所さえ分からなくなる。もとより私の居場所などどこにもないが。

とうとう私は自分のための避難所を探すようになった。
みじめだ,なんて私は弱いのであろう。あんな男の言葉に惑わされ心乱され,逃げ場を求めてしまうなんて。

瀞霊廷をみおろす小高い丘の上に樹齢2000年ともいわれる大樹がある。
幹が太すぎる上に登るのを助ける枝もないこの荘厳な樹の先端に近い太い枝の上,人が座れる空間があった。

高いところが好きな私は,無性に登ってみたくなり,偶然このぽっかりと空いた聖域のようなその場所を見つけた。下から見てもわからず,上からわざわざ覗く者もいないだろうその場所は私の避難所となった。

私はその場所で泣き,叫び,怒り,ギンの悪口を言い,心を解放した。

「市丸ギン,あの性悪狐!私が一体貴様に何をしたというのだ!大嫌いだ!貴様など,変態!キツネ目!大たわけ!!」

涙がボロボロと流れる,誰にもこんな顔は見せられない。兄様にも,恋次にも,浮竹隊長にも・・・まして海燕殿にも。

涙と共に張りつめていた心がほどけて行く。
市丸ギン・・・どこに居ても私を見つけちょっかいを出し,嫌味や皮肉を優しげな言葉で囁く。馴れ馴れしく頭を撫で,肩を抱く。市丸ギン・・・おまえなんか。

「たわけ・・・市丸ギンのたわけ・・・」

さんざん罵った後,私は瞳を閉じる。
身体が沈み込む様な眠気が襲ってくる。いつもそう,こんな場所で眠ってはいけないと頭ではわかっているのに。
それでも私は眠ってしまう。それは抗えないほどの優しい甘い誘惑だった。
眠っているうちに樹から落ちてしまったとしても構わないほどの。
憎らしいギン狐の姿がまぶたに浮かぶ。

「夢の中にまで出てくるつもりか・・・莫迦もの・・・」

ルキアは幹にもたれ眠りに落ちていった。




「また,寝てもうたんか・・・」

ルキアの霊圧が睡眠の規則正しいリズムを刻み始めたのを見計らい,霊圧を消してルキアを上空から見つめていた市丸ギンが音もなく現れた。風の様に軽く舞い降りるとルキアの隣に腰を下ろした。

狭い空間であるというのになぜかルキアの隣で少しも窮屈な思いをしないのが不思議であった。
食事に不自由するような環境ではないのに,また少し痩せたような気がする。
ギンはひどく優しい手つきでルキアの艶やかな髪を撫でる。

「こないなとこで,よお眠れるなぁ。さんざんボクの悪口言うて,そんなにすっきりしたん?」

ギンの顔に悲しいような嬉しいような,常とは違う笑みが浮かぶ。
眠るルキアが樹から落ちることのないよう結界を張ると,ギンはそっとルキアに寄り添い抱き寄せた。
うっすらと開いた赤い唇に触れるだけの口づけを落とす。

こんなことをしてもルキアは眼を覚まさない。
おそらく,隊舎でも朽木邸でも寛いだことなどないのだろう。ゆっくり眠ったことさえも。
ルキアは普段ついぞ見せたことのない無邪気で無防備な顔で眠っていた。
愛らしい寝顔を見つめ,なめらかな頬にそっと触れるとギンは囁くように呟いた。

「いつもいつも張りつめて,限界まで自分ごまかして,心許せるもんにも弱み見せんで・・・ルキアちゃんは,ほんまにあほやなあ・・・」

ルキアは強い,毅然としている,と誰もが言う。彼女に陰口をきき中傷する者たちでさえ。
しかし,ギンはその強さがもろ刃の剣であることを知っていた。

一体誰が強いものが傷つかないなどと決めたのだろう。
懸命に傷ついた心を叱咤し,人一倍の努力で乗り切ろうと懸命にもがくものを強い心の持ち主だと言うのなら,まさしくルキアは強い心の持ち主であろう。

しかし,強い心と弱い心の違いは痛みに直ちに打ち負けるか打ち負けないか,それだけのことなのだ。

痛みを自分で癒す術を知っているならば自らを損なうことなく,その強い心を維持していける。しかし,ルキアは自分を癒す術を持たず,全てをしょいこみ他者に頼ることもなく痛みから目を背け続けていた。強いからこそ,傷ついた心の痛みは癒されぬまま澱のようにたまっていく。

幾多の虚を見てきたギンは知っていた,自分自身に見捨てられた痛みはいずれ化け物のように成長し,少しずつ心を喰らい壊し始めることを。
そう、凄まじい執着が,死者の魂の心をむしばみ虚と化すように・・・

その強さゆえに自らを壊しかねない孤独な悲しい少女。
ギンにはすぐに他者を頼り,自分を憐れんで泣きわめく者,弱い心の持ち主と呼ばれる者達の方がよほど強靭な心の持ち主であることを知っていた。

「キミ自身の強さがキミを傷つけているて,どうして誰もわかってやれへんのやろうな・・・。あの幼馴染も,義理の兄さんも・・・キミの大好きな副隊長はんも・・・」

ギンの口調に苦いものが混じる。
心許したものにさえ弱みを,痛みを見せることのない少女。優しさでは彼女の心を救えない。彼女自身が心を解放しない限り・・・。

癒えない痛みと悲しみに傷ついたルキアの心のはけ口になろうと思ったのは何時のころからであったろう。
自分を恐れ忌み嫌う彼女の心を,優しさや同情で癒すことは出来ない。
だから、会うたびにひどい言葉をぶつけ,いやらしい態度でルキアに接し,その負の感情の標的になることをギンは選んだ(半分は趣味も入っていると自分でも思うが・・・)。

その効果は絶大であった。でも・・・

「キミもあほやけど,ボクもあほやなあ。こないな風にしかキミの心を護れんのやから・・・」

ギンへの怒りに心を解放し,つかの間の優しい眠りに心を癒したあと目覚めたルキアは再びまっすぐに凛として立つのだ。
そして数少ない心許す者達の前で笑顔を見せる。
自分には決して向けられることのない愛らしい笑顔を・・・ギンの胸にかすかな痛みが走る。自分以外に向けられる笑顔にいつまで耐えきれるのだろう。

「いじめっ子は,切ないもんやねぇ・・・」

それでも腕の中の暖かなルキアの温もりに優しく癒されながら,ギンは静かに瞳を閉じる。
優しい温もりから無意識の労わりが伝わってくる。
どうしてこんなにもこの子は優しいのだろう。
本当は誰よりも優しくしてあげたいのに。
真綿でくるむように,掌中の珠のように,この世のすべての痛み,悲しみからルキアを護りたい・・・叶わぬことだとわかっていても――
その温もりに誘われるようにとろけるような甘い眠気が襲ってくる。

(ほんまはボクがキミに護られとるのかもしれんなあ・・・)

じきに静かな規則正しい寝息が二人分聞こえてきた。

寂しい寂しい子供が二人,限りなく近くて切ないほど遠い哀しい子供たち・・・
どうか今だけは同じ夢を見て――。

永遠というものがあるのなら・・・

                  〈END〉

あとがき
40年間ずっとルキアをいじめてきたギン,まさか本当にただの趣味じゃないよね?と思いながら書きました。こんな哀しい騎士道精神がなんだかギンにはふさわしく思えるのです。
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こんにちは!

こんにちは。色々あって訪問が遅くなりました…;

大変美味しかったです…!色々拝見致しましたが、kokuriko様の書かれるギンルキはやはり上品です!
確かにギンには哀しい愛情が似合います!甘ったるい、子供のような愛情や執着でもありですが、このようなあえて嫌われる側に回ってルキアの「素」を解放するのも美味しいです…!
趣味だったらだったで面白いですけどw
この後二人は報われるのでしょうか?
よろしければお答をお聞かせください。
それではーノシ
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