蒼鉛色の追憶

ギンとルキアが幸せに暮らすある日の朝,ふとしたきっかけでルキアはかつて想いを寄せていた人を思い出した…


眠りの帳の向こうから,愛しい少女の声が聞こえてくる。
凛とした涼やかな声,でもどこかまだ覚醒していない気だるげな子猫のような…

「ギン,朝だ。起き…ろ…」

市丸ギンはくすりとルキアにわからないよう忍び笑いをもらす。
昨夜の営みのせいでまだ眠いに違いないのに健気にルキアがギンの顔をのぞき込んでいる。
ギンは薄く開眼し,その顔を見つめる。
常ならば凛然とした怜悧な美貌が寝起きのためにとろりと柔らかくゆるんでいるのが艶っぽく,腰帯の締め具合もゆるやかに纏った夜着の袷からは淡い胸のふくらみの僅かな谷間が,裾の隙間からは無防備に白い足が晒されているのも実に目の得である。無意識に立ち上る,いとけない無垢な色香に気づきもせずに,子供のように布団の上にぺたんと座りこみ,小さな拳で子猫のように目をこするさまは何とも可愛らしい。
ギンは蕩けそうな笑みを浮かべ,するりと長い腕をルキアの細い腰にまわした。そのまま上半身を預けるようにルキアの生膝に顔を埋める。あぁ…ええ匂い…

「いややぁ…あと5分…」

「まったく…」

カーテンの隙間から差し込んでくる柔らかな日差しがギンの髪に降り注ぐ。
銀色の髪に金色の光が映え,あかりを灯したような優しい蜜色に光る。
あまりの美しさにルキアはそっとギンの髪を梳いた。さらさらと零れ落ちる,もの懐かしくも哀愁を帯びたような不思議な透明な金色。

(綺麗だ…確かこんな色をどこかで見たことがある…あの色の名前はなんて言ったのだろう)

その時,風が吹き上げるように
ルキアの心に不意に浮かび上がった遠い風景―――




『ほぉら,朽木見てみろよ。綺麗な夕焼けだぞ』

その日の鯉伏山での鍛錬からの帰り道。海燕とともに見た夕焼けは不思議な色であった。
薄絹のような銀白色の雲にくるまれた太陽が黄金色の光を投げかけ,雲の端々に薄紅,鬱金,鶸色を散りばめながら,ひときわ美しく蜂蜜色に夕空を輝かせていた。

『わぁ…』

ルキアの顔に驚きと感動の笑みが広がっていく。

『こんな不思議な色の夕焼け初めて見ました』

『蒼鉛色の夕焼けだ…ここでしか見られないし,ここでもめったに見られねえ』

海燕はルキアの笑顔を見つめながら微笑んだ。常に見ない珍かで壮麗な景色に嬉しそうに戸惑う少女が可愛らしくて仕方がない。

可愛い,本当に可愛い…俺の…俺の…部下………

ルキアを見つめる海燕の瞳に寂寥の影が走る。
視線に気が付いたルキアが訝しげに海燕の方を振り向いた。

『海燕殿,どうしたのですか?』

『いや…もう少し見ていようか…』

『はい…』

ルキアも海燕も蒼鉛色の光に包まれる。
あの日初めてそっと手を握られたのだった。
その意味を問うまもなく逝ってしまったかけがえのない人…
ふたり並んで見つめたあの空の色は,なんと切ない色であったのだろう。
微かに胸は軋んでもそれはもう彼方の想い…




「ルキアちゃん…今何考えとったん?」

ギンの声にルキアは白昼夢から醒めたように我に返った。
二度寝の惰眠を貪っているのかと思っていたら起きていたらしい。
声は穏やかだがその響きは存外鋭かった。腰にまわされた腕にほんのりと力が加えられた。全く妙に勘の鋭い…ルキアは胸にちり,と痛みを覚える。
返事の代わりにルキアはくしゃりとギンの髪を撫でまわすと,腰に縋られたまま身体を精一杯に伸ばし一気にカーテンを開け放った。帳から開け放たれた燦々と照りつける猛々しいまでに眩しい陽光に,かえってギンの髪は元の銀色を取り戻す。

「うひゃぁ!溶けてまうわルキアちゃん!」

ギンはじたばたと暴れ,布団に再び潜り込もうとする。もちろん細腰にいっそう強くしがみつきながら…ルキアごと布団のなかに引っ張りこむ気満々である。
二度寝の共犯者にしたいようだが,その手には乗らない。ルキアはギンの頭をポコンと軽く叩いた。

「ギン,ふざけていないで起きないと遅刻するぞ!朝ごはんも抜きだ」

「えーそれは堪忍…」

「だったら早く起きろ!」

言葉こそ強気であるが腰にしっかりまわされた腕を跳ね除けようとしないのは
ギンが全てわかって引いてくれたことを知っているから。
誰のことを思っていたのかを薄々承知していて,本音は大いに気に入らないながらもルキアの想いを尊重してくれているから。
ルキアは胸の内で呟く。

(ありがとう…ギン…)

いつかあの夕焼けをギンと見に行こう。二人並んで手をつないで…
ルキアは晴れやかな笑みを浮かべ,愛しい夫の髪を再びそっと撫でた。

今の私には思い出の中の至高の夕焼けよりもおまえと迎える何気ない朝の方がずっと尊く美しいのだ…と胸の内で呟きながら。


                   END


あとがき
ギンルキ強化月間第一弾でございます!
少なくとも3話はUPする予定ですのでどうか熱いエール(心のなかで構いませんので…)宜しくお願い致しますm(_ _)m(愛)


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早速参上致しました^^
久しぶりでコメントをどちらに書けばよいか悩みましたが、折角ブログコメがあるので広いこちらにさせて頂きましたよヾ(^∇^)

いつも思っていることですが、コクさんの表現力の耽美さには溜息が出てしまいます。
今回はルキアの心の中に住む海燕と、その存在を感じとったギンとの、ささやかでも心通じ合ったやり取りに胸が疼きました。
愛し合い夫婦となっても尚、ルキアが誰かを思うことが許せない心の狭さに愛情の深さを感じます。
そして、それでこそ我らがギンです☆(同士

コクさんにこれだけ愛されたギンルキ界は安泰ですねw

この1話だけでも素晴らしいのに、後3話UP予定に期待高まります。ので、私からも熱いエールを送らせていただきますよ~^^/♪
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神の意志はともかく市丸ギンと朽木ルキアをこよなく愛しております♪

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