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王子とキツネと薔薇の花

 心優しきギンルキスキーの皆さま、私たちの愛する市丸ギンの誕生日を共に祝えることを嬉しく思います。これからも、まだやっていきたいという気持ちが続く限りブログは続けていこうと思います。どうか、お暇なときにでも遊びに来てください(愛)

 ギン、誕生日おめでとう(愛)キミとルキアちゃんが好きで好きで好きで…どうしようもないほど大好きです。
これまでも、これからもずっとずっと…(祈愛)

 結びつかないような言葉がつながるとその隔たり故にひどく美しく聞こえる
乱雑と整然、粗暴と優しさ,そして不埒と清廉…



 夜明け前のひんやりとした空気に包まれる隊舎廊、背筋を伸ばし渡っていく凛とした影、その姿を追うように不意に現れたゆらりとした長身の影。市丸ギンは夜勤明けの朽木ルキアを呼び止めた。

「ルキアちゃん,夜勤お疲れさん」

「おはようございます,市丸隊長。私は報告書の提出がありますので失礼致します」

一瞬眉を顰めたがすぐに冷ややかにすれ違おうとするルキアをギンは逃さないとばかりに前に回りこみ進路を塞ぐ。つれない態度にもどこ吹く風の体で薄ら笑いを浮かべたまま,長身をかがめ愛らしい顔を覗き込むように見つめた。

「その馬鹿丁寧な敬語は引っ込めといてや。今は隊務中やないやろ」

「ふん…おまえがそのつもりなら無礼講でいかせてもらおう」

「もう帰るだけなんやろ、ちょっとだけ付き合うてや」

書類などとっくに提出してしまったし、夜勤明けに休暇が入っていることもお見通しのようだ。手を引かれ隊舎廊に面した屋内庭園に導かれる。広大な敷地面積を持つ護廷に内接する庭園は緑豊かでちょっとした公園くらいの広さがある。常夜灯の光がはんなりと照らすあずま屋のベンチにギンは腰掛けルキアも座るように促す。

「さ,早う座り。隊長命令やで」

「無礼講ではないのか」

「言葉遣いだけや」

「都合の良いことばかり言いおって」

そう言いながらも口ほど怒ってもおらず,ルキアもすとんとギンの隣に腰掛けた。
ふたり並んで座り最後の星が消えゆく明け空を見上げる。
神々しいほど綺麗な透きとおった藍色の空―

 ふわりとルキアの身体が浮いた。隣から伸びてきた大きな手がルキアの腰を掴みあっさりと膝の上に乗せてしまう。それは瞬きするよりも速い一瞬の出来事、ルキアは自分が羽にでもなってしまったかのように錯覚する。この男の腕のなかはまるで重力を無視しているかのようだ。

「…っっ!?何をする!」

暴れようにもその腕の檻はひどく優しく,暖かくて,ルキアの態度のほうが悪いような気持ちにさせられてしまう。まったく狡い男だ…あきらめたようなため息とともに、すぐに大人しくなってしまったルキアにギンは満足気に笑いかけながらくちを開いた。

「なぁルキアちゃん,ボクにとって空はただの空や。何の特別な感情もあらへん。でもキミのその瞳は綺麗やね。まるで今見てる夜明けの空みたいや,夜が朝へと切り替わる前の刹那の優しい藍紫色してはるね」

ぱちくりと見開いた大きな瞳を愛し気に見つめながら、ギンはルキアの頭を慈しむように撫でる。

「ボクとキミが恋人同士になったら,ボクは夜明け前が待ち遠しくてしかたなぁなるわ。夜明け前の空は、ボクの宝物になるんや。名残惜しげに光っている最後の星の瞬きさえボクはきっと愛しゅうなるよ」

優しく甘い耳に心地のよい,男にしてはやや高めの声。耳も心もくすぐったくてたまらない。いつもいつも大胆なことをするくせに妙に遠慮がちで,どこかぎこちない手つきで髪を撫でるのは相変わらずだ。細い長い指の感触が心地よい。この男らしくもない不器用な撫で方はあんがい嫌いではない。

「それは『星の王子さま』のキツネの台詞のアレンジだろう?」

得意げな瞳でにらんでくるルキアにギンはわざとおどけた声で言葉を返す。

「ありゃ,読書好きのルキアちゃんにはお見通しかいな。でも本心やよ」

「調子が良いやつだ」

呆れたような少女の言葉に,銀髪の狐は楽し気に言葉を継ぐ。

「でも,ルキアちゃんはボクを置いてどこにも行かんといてな。夜明け前の空は本当のタカラモノには敵わないんやから…」

ギンはルキアをぎゅっと抱きしめて耳元に囁く。それは,どこかからかうようでいてほんの少しだけ泣きそうな声だった。だから…素直に返したくなってしまうのだ。

「おまえのそばを離れぬよ」

「それ,遭難した飛行士の台詞やねぇ」

「だが、本心だ」

返事はなく、ただ器用に喉奥で笑う音がした。ルキアの顔を肩口に押し付けているのは,きっと泣き顔を見られたくないからなのだろう。好いている自分にさえ弱みを見せるのが嫌いな男。
小さな星に咲いた、たった一輪の薔薇の花のようだ。我儘で傲慢で、繊細で…
ルキアは護るようにギンの広い背中に腕をまわした。
この世界を信じろ…私を信じろ…心を,想いを,己の全てを賭けて刻んでやりたい,この男の魂に…

キミのそば離れないよ――――


             END




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