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キミはキセキを信じない…

とある世界軸で命尽きた市丸ギンの霊体は宇宙に輝く星の数よりも無限のあまねく並行世界をただたださまよい探し続けた。ただひとつの想いを抱いて、砕けそうな意志と自我をぎりぎりまで保ちながら…たとえ神であろうと、この想いだけは消させない。
そして、37億8千567万4968回目にして、ついにたどり着いた、望みに望み、焦がれに焦がれ続けた彼の唯一つの奇跡とは…
市丸ギンと朽木ルキアが結ばれる幸せな未来、あらゆる並行世界において起こりうる可能性全てを考慮されたうえでの全演算結果における蓋然性確率0.000000036%…


「だってキミとボクが一緒に居られるってこと自体奇跡なんやよ。それこそ、この世界の未来が全て変わってしまうくらいの」

 最近、交際することになってしまった銀髪、切れ長の瞳の男、市丸ギンはいつもの人を喰ったような笑みを湛えた表情で私に嘯く。甘味処で待ち合わせ、差し向かいで白玉あんみつを食している間、彼が全く眼の前の甘味に手を付けず幸せそうに私の顔ばかり見つめている。それがくすぐったくて居心地が悪くて、じろじろ見るな、食べにくいではないかという私の言葉に返答したギンの答えだ。

「…っ!?」

 私は匙の上に乗せた白玉を落とすほどに、呆れて目の前の男をまじまじと見つめ返した。いつも通りの、締まりのないにやけ顔。やはり、たわけだなこの男は…でも、その笑みによく似た切れ長の瞳の奥になぜか私の背筋が震えるほどの凄惨な覚悟を感じたのは気のせいだろうか。
 いいや、この脳天気男にそんなものがあるはずがない、まったく…たわけた考えだ。だいたい私がこの男になびいたからと言って世界がどれほど変わるというのだろう。平凡な男女が(訂正、この男はすさまじく非凡で超絶な変態だ…)普通に(?)出会って交際を始めた。ただ、それだけのありふれたことだ。本当に、いつもながら大袈裟な男だ。そう言ってやると

「ルキアちゃん…」

優しく私を呼ぶ声。そして、いつも彼は自分だけがわかっているんだとでも言いたげな不可思議な薄い蒼の瞳を開眼する。美しい瞳だと癪ながら思う。決して擦り切れることなく、磨きぬかれてきたと何故か信じられる強靭な意志が宿るその瞳は…

ああ、おまえはどうして…
毎日しつこいほど会いにくるくせに…
ふたりきりの時は片時も傍らを離れないくせに…
どうして、そんなにも懐かしい瞳で私を見つめるのだ…

「ギン……っ?」

すっと大きな手が私の目の前に差し出される。まるで私の唇からこぼれる言葉をはばむように。そのまま、まるで宝物にでもふれるかのような優しい、ほんの微かなためらいを湛えた手のひらが私の頭を慈しむように撫でる。それこそ本当の奇跡にでもふれるように。

「ボクを見て…」

そう、まるで宇宙で唯一つの星を見つけた旅人のように―――


          END


あとがき 
クリスマスには奇跡がいつだって起きなきゃ始まらないのです。
どうか心優しきギンルキスキーの皆さまにHappy Merry Christmas!!(深愛)




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