天上の花

隊舎郎を歩いていたルキアの頭上から突如降りそそがれたものは…


いきなり降りそそいだ真紅の花の雨。朽木ルキアは驚いて足を止めた。
足元に落ちずに華奢な肩にとどまった花をつまんでルキアは唖然とした。
それは大輪の彼岸花であった。別名,死人花,地獄花とも呼ばれる,不吉であると時に人々に忌み嫌われる紅蓮の花。

「ボクからの贈り物や。気に入ったかルキアちゃん。」

振り向くとそこに立っていたのは三番隊隊長市丸ギン。いつもの人を喰ったような嗤いを口元に湛え,真紅の花にまみれたルキアを楽しげに見下ろしていた。

殿方から花を受け取ると言う行為は本来ならば心ときめく事柄であろうが,花の種類ともらう相手に問題があり過ぎた。それに無造作に頭から振りかけるとは・・・
ルキアは足元に散らばる血のような花を見つめ呟くように言った。

「こんなにもたくさん,どこで・・・」

「虚討伐の遠征途中で見つけたんや。小さな谷にまるで赤い絨毯敷いたみたいに咲き誇っていてなあ。ルキアちゃんにも見せたかったわ。だから,ありったけ摘んで来たんよ。」

およそ女性に贈るような花ではないのに,ギンの言葉に毒は含まれてはいない。
幼い少年が花を見て綺麗だから摘んできましたと言うような悪びれない態度だった。
もっとも,これもまた嘘なのかもしれないが・・・
ルキアは顔を上げてギンの顔をじっと見つめ,悲しげに口を開いた。

「私は,野に咲いている花はそのまま咲かせておく方が好きです。もうこのようなことはなさらないでください。それに,この花はあまり飾って愛でる類のものでは・・・」

ルキアの態度には構わず,ギンは珍しく自分をまっすぐ見つめるルキアを見て嬉しげに笑った。

「なあ,ルキアちゃん彼岸花は別名,狐花とも言うんは知っとった?ボクや思うて部屋に飾ってくれん?」

自分の言葉には耳を傾けず,話を進める相変わらずのギンの態度に軽くため息をつくとルキアは膝をつき,彼岸花を拾い始めた。ギンも一緒になって拾い始める。

「朽木の家に持ち帰るわけにはいきません。執務室に飾らせてもらいます。」

「へええ。相変わらずつれへんなあ,ルキアちゃんは。でも突っ返されんだけ嬉しいわ。雨乾堂の隊長はんのとこにも特別に飾ってあげてもええよ。」

「あなたと言う人は・・・」ギンの笑えぬ冗談にルキアは軽く眉をひそめた。

確かにギンからの贈り物など,普段なら絶対に受け取りはしない。
しかし,このまま床に放置しておくのは花が哀れに思われた。
不吉だとうとまれ,忌み嫌われる花が自分と重なって見える。
流魂街出の自分が朽木家の養子となったことで,うとまれ避けられそのくせ腫物のように扱われているように。

ギンは拾い集めた花をルキアに手渡すと,しみじみと彼岸花を両手いっぱいに抱えたルキアを見つめた。口には出さず心の中で呟く。

(綺麗やなあ・・・ほんまにルキアちゃんは綺麗や・・・)

墨染の死覇装を纏った色白で可憐な少女の腕に抱かれた彼岸花は,いっそう紅が濃く燃えるように鮮やかに映る。
漆黒と真紅の対照的美しさに白磁の肌と宝石のような藍紫の瞳がいっそう際立つ,まさに天上の美であった。

「・・・?どうかなさいましたか?」

「うん・・・この花・・・いや何でもないわ。」

珍しく口ごもったギンを見てルキアは不思議そうな顔を一瞬浮かべた。
そのまっすぐな視線を眩しげに見つめながら,ギンは心の中で自嘲していた。

(なんで,一番言いたいことは言えへんのやろ・・・)

いつもはもっと口が上手いのに,そう嘘ならいくらでもつける。でも素直な言葉は苦手だ・・・。
ギンは自分の言葉の足りなさがもどかしく思えた。
褒めたかったのに,彼女の前では嫌味や皮肉しか滑らかに紡がない己の口が疎ましかった。
それに,たとえ口に出したとしても,褒め言葉と受け取ってはもらえないだろう。

「・・・花をありがとうございます。では,私はこれで。」

「うん,またなぁ。ルキアちゃん。」

優雅に一礼して去っていくルキアの凛とした後姿が見えなくなると,ギンは小さくため息をついた。
ふと足元を見ると両手いっぱいに抱えあげた時に落ちたのか,彼岸花が一輪落ちていた。
ギンはそっと拾い上げ真紅の花に唇を寄せた。
ルキアの胸に一瞬でも抱かれたかと思うとそれだけで愛しい。

(この花は本当に,キミにそっくりやって言ったら,怒るやろうか・・・)

そう,人はどんなに此の花を死人花よ,地獄花よと忌み嫌おうとも,その美しさに魅かれずにはいられない。
キミの出自がたとえ,流魂街最下層に近い場所であっても,その美しさ,気高さに変わりはないように・・・キミに瞳を,心を奪われずにはいられないように・・・。

彼岸花,別名,曼珠沙華『天上の花』という意味を持つ花。

だからボクはキミにこの花を贈る。
きっと,キミにこの花をささげるにふさわしい者はボク以外に居ないから・・・


彼岸花の花ことば――『悲しい思い出』そしてもうひとつ・・・

『想うはあなた一人』

                 〈END〉


大好きなサイト様の素晴らしきギンルキ小説を読んで生まれたのがこのSSです。とうていその方には及びませんが彼岸花の花言葉にギンの想いを重ねた私なりのSTORYになったかなあと思います。最近更新されていませんがおげんきでありますように(祈)

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