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夜の虹

瀞霊廷を見下ろす大樹の先端にある秘密の場所,ルキアの避難所にして聖域であったのだが,いつの頃からかギンが現れ共に時を過ごす様になった。そんなある夜,雨が降ってきて…

※『哀しき花の護り人』とは内容的には繋がりません,違うパラレルです。
 

「なんや,ルキアちゃんも来とったん。奇遇やね。」

独特の聞き間違えようのない話し方,市丸ギンが音もなく隣に立っていた。
ルキアは微かに苦笑した。奇遇とはよく言ったものだ。
なぜなら,今ふたりがいるこの場所は,瀞霊廷をみおろす小高い丘の上にある樹齢2000年ともいわれる大樹の先端,人二人がやっと座れるスペースしかない太い枝の上なのだから。

「隣,ええよね。」

ギンはルキアの返事も待たず,ルキアの横に並んで座った。
背が高い男であるのに,この狭い空間で少しも自分を窮屈に感じさせないのが不思議であった。

「ええ月やね。また夜明かしするん?」

「・・・家には夜勤が入ったと言ってあります。」

ここはもともと,高い場所が好きなルキアが辛い時,悲しい時にいつも避難所としていた秘密の場所であった。

そのため,ある晩ひょっこりギンが現れた時,ルキアは驚愕したものだ。
この場所は下から見る限り自分が座っている位置は見えないはずだし,相当な高さがある。

自分にとってもお気に入りの場所だと主張するギンの言葉をうのみにしたわけではないけれど,ルキアがこの場所を訪れる時ギンは決まって現れるようになった。

それ以来,ただ並んで夜空を見上げ,時を過ごすという不思議な逢瀬が続いていた。

何故自分は逃げ出さないのだろう。ルキアは不思議に思う。この場所以外でこの男と遭遇しようものなら,踵を返し逃げ出したくなるというのに・・・。

夜空に輝く満月は,あたりを煌煌と照らし世界を銀色に染め上げていた。
ルキアはギンのさらさらとした銀髪が月明かりの下,いっそう輝いて見えるのを美しいと思った。
この男には本当に月明かりがよく似合う。

「ルキアちゃんには月明かりがよう似合うわ。キミの髪から,銀の滴が零れとるように見えるよ。」

ギンがルキアをしげしげと見つめながら言った。自分もギンのことをそう思っていただけにルキアの顔に微笑みが浮かんだ。
月明かりの下で見る互いの姿は,まるで共通点の無いふたりであるというのに,ひどく似ているような気がした。
不意にギンがルキアの肩を抱くように寄り添うと,ふわりとルキアは頭から隊長羽織を被せられた。

「!?――何を?」

「もうすぐ雨が降るんよ。」

夜空に輝く月を見てギンの顔を見ると,ルキアはやんわりと身を引こうとしたが,ギンはルキアの肩を掴んで留めた。
ルキアは咎めるように口を開いた。

「こんなに月が綺麗なのに?」

「雨の匂いがするんや。」

ギンがそう言うと同時にぽつぽつと雨が降り出した。夜空には満月が輝き,雲ひとつないというのに雨は激しく降り注いだ。
樹の葉の影に隠れ,隊長羽織に身を包むふたりは,まるで寄り添うつがいの鳥のように見えた。
ギンとルキアは言葉もなく銀色の月光の中,降りそそぐ雨の銀糸にしばし見惚れた。

「もうちょい,くっつかんと濡れてまうよ。」

「いえ,私は・・・」
 
ギンは自分の肩が濡れることなど気にもせずルキアをしっかりと羽織で包んでやった。

「雨,嫌いなんやろ?」

「・・・。」

ルキアは雨が嫌いだった。そう敬愛する上司を斬ったあの日も雨であったから・・・
でも,今ギンと見ている雨は美しいと思った。明るい月夜に降る雨はルキアが生まれて初めて見る美しい雨だった。

「キツネの嫁入りやねえ。」

「・・・?」聞きなれぬ言葉にルキアが不思議そうにギンを見つめた。

「現世では,昔,天気雨のこと嫁入りをする狐達が、嫁入り行列を人間に見られない様に雨を降らせているて信じられていたんやて。そやから天気雨のことを『狐の嫁入り』て言うんよ。まあ夜は珍しいことやけどなあ。」

「美しい表現ですね・・・」

ルキアは雨の中,密やかに進むキツネの嫁入り行列を思った。
『狐の嫁入り』はにわか雨らしく,じきに止み,ルキアは少し名残惜しげに月を見上げた。

「ルキアちゃんあれ見てみ。」

ギンがルキアの肩を抱き夜空を指さした。

「ああっ・・・」

ルキアは息を飲んだ。夜空に信じられないものを見たのだった。

それは銀色に輝く虹であった。昼間にかかる七色の虹ではなく満月の光の下で生まれた儚くも美しい銀色の月虹・・・
奇蹟のような光景にルキアは息をするのも忘れるほど,魅入られたように月虹を見つめた。

(私は今この世で一番美しいものを見ているのではないのだろうか・・・)

ルキアとギンは言葉を発することもなく夜の虹が消えてゆくまでその美しい姿を瞳に焼きつけ続けた。

虹が消えてしまうとギンはルキアに呟くように言った。

「なあ,ルキアちゃん知っとる?虹の根元には宝物が埋まっとるんやて。」

「・・・おとぎ話ですか?」

「伝説みたいなもんやね。ある男が宝物を求めて虹の根元を探しに行くって話があるんよ。」

「見つかったのですか?」ルキアの瞳がきらきらと輝く。

「虹は近づくよりも早く消えてまうからなあ。結局何も見つけられず故郷に帰っていったんやて。」

「・・・。」ルキアは小さくため息をついた。そんなルキアを見てギンは小さく笑った。

「何年かぶりに帰ってきた故郷を前にして男は天気雨にうたれるんや。そして自分の故郷に美しい虹がかかっているのを見るんよ。」

「じゃあ虹の根元には?」

「虹の根元には男の家があったんや。家には彼が故郷に残してきた妻と留守の間に生まれた子供が男を迎えてくれたんやて。」

「その男は宝物を見つけたのですね。」ルキアの顔に笑みが広がる。

それはルキアが欲しいもの,心から欲するもの,そして自分には決して与えることが出来ないもの・・・。

嬉しげに笑うルキアをギンは不意に胸に抱きしめた。愛おしい,愛おしい少女・・・
自分にそれを与えることができるなら・・・

「市丸隊長・・・!?」

「ちょっとだけ,ちょっとだけでええから,このままでおって・・・ルキアちゃん・・・。」

大きな腕の中にすっぽりと包まれているのは自分なのに,なぜか幼子にすがりつかれているように思われた。
ルキアはいたわるようにギンの背中に腕をまわした。今だけ,今だけだと己の心に言い聞かせながら・・・

ギンは虹の根元を目指す自分を思った。虹の根元に自分の望む幸せなどないことを知っているというのに・・・
そう,宝物はボクの腕の中にある。虹の根元に行くよりも遠いけれど・・・


再び銀色の雨が降り始めた。抱き合う二人を優しく包むように隠すように―――。

               
                  〈END〉


あとがき
満月の夜に大樹の上で夜空を見上げるルキア。寄り添うように座るギン。にわか雨,キツネの嫁入り,被せてもらう隊長羽織。空にかかるは夜の虹。雨は大嫌いだけれど・・・
ルキアと一護は雨にまつわる共通の悲しい記憶を持っていて,それが二人の絆であるけれど,ギンとルキアには雨にまつわる共通の美しい記憶が絆になってくれたらいいなあと思ったらこのSSが出来ました。奇跡のような偶然でもなければなかなか見られない月虹の下でふたりが優しく抱き合っていてほしいという祈りを込めて(愛)

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